活動会員のレポート

ABIC日本語教師養成講座について

日本語教師養成講座講師  鈴木 すずき 松子 まつこ

 日本語教師養成講座が始まったのは今から5年前で、この9月で第1期以降の講座修了者は110名を超えました。私は2年前、先代の先生がご逝去されて、第7期の講座から講師を引き受けて2年が過ぎ、この10月で、第11期を迎えています。現在の受講者は7名で、実践に重きをおいて講義を行っています。

 私は40歳で主婦の傍ら、大学に入り大学院(修士・博士課程)へ。その後、大学で2年間非常勤講師を務めた後、51歳で単身アメリカへ留学しました。MBA修了後、交渉学を学び、大学で講師を務める傍ら、今なお学研の途にあります。
 40歳からの大学での勉強は下りのエスカレーターを駆け上るようなものでしたし、留学においては、これが血のにじむ思いかという感がありました。いずれにしてもあらゆることに素直に取り組むことで克服したと思っています。そして私の理念は「巾のある柳のようにたおやかな弾力的な思考と堅固な基礎の確立」
です。

 そういうことから、講座の最初に受講者の皆さんに必ず申しあげることがあります。「これまでの経験・知識・教養は一旦机の引き出しにしまって、異物を飲み込むべく胸襟を開いて下さい。新しいことを学ぶには、素直であること。これは学ぶことの第一条件です。教えることにも素直さが大切です。白いキャンバスにきれいな絵を描いていただきたい。」
 また、「教授する」ということでは、専門の指導は勿論ですが、もっと大切なことは学ぶことに対する意識の改革のお手伝いをすることです。そのために、人数の多少、年齢、男女に関係なく対峙している人にいかに向き合うか、という考えから、本講座でもそのことをお伝えしています。

 日本語教師は、講じるのではなく、学習者のコミュニケーションの手助けをすることを目的として、一人ひとりにきちんと対峙した授業をすることが大事だと考えます。このことから、実践に重きを置き、教えることの基本を身につけてもらいます。基礎を徹底的に身につけるため、初級レベルの人を対象とした模擬練習(トライアル)をしながら、基礎の確立を目的としています。最終的には、各人(程度の差はあれ)が滑走路で離陸の準備が出来ている状態になっています。

 私の授業法には賛否両論あるとは思いますが、講座修了後、半数以上の方が日本語教師として多方面で活躍していらっしゃいます。最初は自己啓発のために参加された方も、後半は早く日本語を教える場に立ちたいという想いが強くなり、その活動をされます。即、日本語教師をしなくても、講座を修了したことをきっかけに、新たな挑戦事項を探すという方もいらっしゃいます。

 組織に文化が根付くように、クラス毎に独自の文化が形成されます。新しい期を迎えるたびに、緊張と期待に胸を膨らませながら、受講者の皆さん一人ひとりと真剣に対峙し、楽しい時間を過ごさせて頂いていることに心より感謝しています。