活動会員のレポート

エコロジー促進事業協同組合が実施する外国人技能実習生への日本語研修
―ABIC会員40名が講師として登録

 2011年5月にエコロジー促進事業協同組合の高野理事長からABICに、同組合が実施している外国人技能実習生に対する集中日本語講座の講師紹介の依頼があった。
 同組合の外国人技能実習が公的制度に則り、今までにも多くの実績があり、またABICの国際社会貢献並びに外国人に対する日本語教育促進の観点からも意義ある活動と認識し、昨年7月にABIC会員へ同組合の日本語講師について説明会を開催。趣旨に賛同頂き日本語講師として登録頂いた会員は40名となった。
 ABIC会員による日本語研修は現在まで4回、延べ7名の会員が研修生と赤城、御殿場、那須の国立青年の家に泊まり込み、1講師平均6日間の講義を行った。第1回目の講師を務められた松本会員から以下の感想が寄せられたので紹介する。


フィリピン人技能実習生へ日本語を教える

松本 まつもと 時男 ときお (元 蝶理)


国立那須甲子青少年自然の家(白河)で
最後の授業後、
教室で記念撮影中央が筆者、
その右がエコロジー促進事業協同組合
の西脇専務理事、
外国人技能実習生受入事業部の
和久部長と田代氏(右端の女性)

国立那須甲子青少年自然の家(白河)
での授業(2012年3月)

最後の授業後、
教室への入り口で実習生と

 教室に入ると全員が起立し「おはようございます」、と挨拶を受けた。授業中ではあったが初めての人を迎える時は挨拶をする習慣がついている。授業の始まる前には、勿論全員が起立し「よろしくお願いします」の挨拶があり、「ありがとうございました」で授業を終わる。廊下で出会うと、その日の最初の時だけでなく、出会う度に「こんにちは」と挨拶をする。朝一度挨拶をしたので2回目からは挨拶しなくていいだろう、という発想はない。当然のことながらこちらも一日に何度も挨拶を返すことになる。
 食事の後は全員が厨房の前に整列し、厨房の方に「ごちそうさまでした」と挨拶をしている。2012年3月の白河での授業の時はたまたまアメリカ人の英語教員のグループも研修に来ていた。しばらくして気がつくと彼らも食後に厨房の方に、実習生と同じ様に挨拶をする様になっていた。しかし、不思議なことに日本人のグループにはそれは見られなかった。
 研修は毎回文部科学省所管の青少年の家等の施設で行われているが、ここの決め事として「朝の集い」「夕べの集い」が日曜日も含め毎日行われている。ここでも実習生の礼儀正しさがすぐに分かる。殆どいつも一番早く集合場所に集まっているのは実習生であり、後からやって来るのは日本人である。国旗・所旗の掲揚・降納、ラジオ体操の際の皆の前での実技などについても積極的にやる意欲が見られる。
 中国、フィリピン、ベトナム等の国々から技能実習生を受け入れているエコロジー促進事業協同組合(以下、協同組合)さんからABICが彼等に対する外部日本語教師の委託を受け、その一人としてフィリピンからの技能実習生相手に日本語を教える機会に恵まれた。3月の那須(白河)での実習は彼等が来日して4日目から授業を受け持ったが、このわずか3日間の期間に彼等はこれだけ素晴らしい礼儀作法を身につけた、というか、協同組合さんはその様に教育をされている。企業に派遣する以上は言葉(日本語)だけでなく、日本での礼儀作法、文化を知ってもらいお互いに、この会社に派遣してもらってよかった、この人達に来てもらってよかった、と言える環境づくりをされている組合さんにさすがにこの道の専門家であることを感じる。
 授業だが、やはり最初の一時間目はややかたい。しかし、少し慣れてきた段階に実習生同士で会話をさせると実に面白い会話のやりとりをしてくれる。部屋中が爆笑になることもあるし、また、「え~」とひやかされる実習生も出てくる。こういう会話が早い段階でできる様になると実習生の名前を覚えるのも早い。
 とにかく熱心なのが気持ちいい。「夜補習をしようか」と声をかけると、全員が「はい」と応える。朝の集いで自己紹介をしますが、これでいいですか、と原稿をもってくる実習生もいる。自分の名前を漢字で書きたいのですが、と言ってくる実習生もいる。そして、うれしいのは最後の授業の日にグループで手紙をくれたことである。
 海外の多くの国々での長い駐在により日本語教育に強い関心を持っていた私は2006年に開講されたABICの「日本語教師養成講座」を迷わず受講した。会社人生活を卒業後もこの様な国際的な取り組みに関わることが出来るのも協同組合さんとABICのお蔭であり恵まれた人生である。この様に彼等が育った、そしてアセアン諸国の中で未だ訪問したことのないフィリピンを是非早い機会に見てみたいと思う。