活動会員のレポート

横浜サイエンスフロンティア高校での「グローバルスタディ」の講義から感じたこと

  眞鍋 まなべ 忠夫 ただお (元 丸紅)


教壇の筆者

 2014年10月25日ABICの依頼により、横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校で「グローバル社会を生き抜く力」というテーマで講義した。同校は、文部科学省より26年度スーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定され、「内外の多様な教育資源を活用したグローバルリーダー教育の研究開発」を掲げて取り組んでおり、今回の講義はその一環としてのものであった。
 SGHは「グローバル化が加速する現状を踏まえ、社会課題に対する関心と深い教養に加え、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付け、将来、国際的に活躍できるグローバルリーダーを高校段階から育成すること」を事業目的としており、26年度は全国から56校が選ばれ、5年間にわたり予算が割り当てられる。
 さて当日教室に入ったが、まず担当教諭の私の紹介等は英語で行われた。生徒は全員この講座を自主的に応募した高校1年生であるが、後で聞いたところ、教諭の話された内容はほとんどの生徒がこの程度の英語なら問題なく分かりますということであった。正直驚きであった。自分の高校1年生の時だったら、ほとんど分からなかったはずである。
 今回は第1回とお聞きしたので講義の内容は大きな視点から行った。すなわち、「グローバルな人材」とはどういう人材かについて私の考えを以下のように述べた。まず世界に通用する人材であり、視野が広く、いろいろな角度から物事が判断できること。物事を自分でクリエートする力を持っていること。自分の物の見方を持っていること。人と会話ができること。自己管理ができること。リスクマネジメントができること。相手の国の事情・習慣・宗教等を理解してあげること。人種・職業等の差別をしないこと、等。
 要するに海外に何年住んだことがあるとか、何ヵ国行ったことがあるとかということとは全く関係なく、個人の実力と人間性の問題であることを強調した。例えば、人と会話をするためには、語学力はもちろんのこと積極性、話題性、公平性がなければ話はできない。相手がこの話題は自分に参考になる、または聞いていて楽しい、面白いということでなければ会話にならないのである。そして双方向の会話でなければならないのである。
 そのためには情報が必要であり、普段からいろいろな分野の人たちとの交流に積極的に参加し、必要な時に必要な生きた情報が得られるよう人的財産も築いておく必要がある。新聞・インターネット等から得られる情報だけでは説得力がない。
 また海外では政治面、ビジネス面、生活面等でいろいろなリスクに直面するが、それを可能な限り回避する準備と心構え、要するにリスクマネジメントがいかにグローバル社会では重要なことかも強調した。簡単に言えば、海外に着いた途端パスポートを盗まれましたということになればその先に進めないのである。鳥インフルエンザの流行しているところにマスクも持参しないで行くというのは無謀だということである。
 この講義の際、私が一番感銘を受けたのは、生徒たちの積極性であった。私は地方の大学等でも数年講義をしたことがあるが、その時の大学生は一部を除いては単位のために授業に出ているというだけで、積極性は全く感じられなかった。
 横浜サイエンスフロンティア高校の生徒たちは、授業の際も一生懸命聞いてくれたし、質問も数多くしてくれた。授業後も私の周りに数人が残り、質問を繰り返し、それは偶然帰りの電車も一緒になったことから鶴見駅まで続いた。こういう学校、生徒がたくさんあればとつくづく感じた一日であった。横浜サイエンスフロンティア高校のこれからのチャレンジを楽しみにしている。