活動会員のレポート

筑波大学での新規講座開設

  布施 ふせ 克彦 かつひこ (大学講座担当コーディネーター、元 三菱商事)

 文部科学省の推進する「グローバル人材育成推進事業」の【特色型】に採択された筑波大学(人文社会系)が展開する、地域研究イノベーション学位プログラム(ASIP=ローカル最適なグローバル人材の育成)の一環として、「グローバルサウス講義Ⅰ(新興国経済論)」という講座が2014年度より開設され、10人のABIC会員が2コマずつの講義をリレーする形で、講師を務めることになった。
 筑波大学のASIPでは、学士・修士課程を5年で修了し、修士課程の1年間で、海外の重点校での学習、研究に即した現地調査、インターンシップへの参加などを学生に義務付けている。アジアを中心とする新興国で活動する日本企業などが求める、人材の育成を目指すためのプログラムである。その中でABICが請け負った講座は、新興国経済を主導するBRICS諸国論をはじめ、他の成長著しい世界中の主な新興諸国(地域)論、さらには欧米先進国論をもカバーする、まさに世界を俯瞰ふかんする講義構成となっている。
 本講座は2014年11月12日に始まり、2015年1月28日まで行われた。筑波大学は本講座のために、特別にポスターを作って、学生に受講を呼び掛けてくれた。その結果、予想を超える約70人の学生から履修届が出された。
 ABIC活動会員の講師たちも大学側の期待に応えるべく、十分準備を整えて講義に臨んだ。自らの経験と知識をベースに、多彩な情報やデータを取り入れながら、担当する地域(国)の実情を、分かりやすく浮き彫りにすることに努めた。学生たちはABIC派遣講師たちの講義に熱心に耳を傾け、さらには活発な質疑応答が飛び交うことで、教室は毎週盛り上がった。
 今や世界人口に占める新興諸国の人口は70%に達し、その国内総生産の総計も、先進諸国の総計と肩を並べる勢いである。人口増加や経済規模の拡大も、今後は圧倒的に新興諸国が舞台となることは確実な状況で、これまでの欧米型ビジネス対応からの発想転換が求められている。
 従来のグローバル化教育といえば、欧米先進国での活躍を目指す人材育成を意識する傾向があった。その中で、グローバル化の対象を新興国(地域)に置いた筑波大学の取り組みは、世界の状況変化を先取りする画期的なプログラムである。
 新興国と一口に言っても、その中身は恐ろしく多様である。そこには、日本や欧米の思考経路では割り切れない価値観が幾つも存在する。このようなグローバル人材育成の新たなステージの模索を支援することは、多様な異文化経験を持つ会員を擁するABICにとって、その力量を十二分に発揮できる舞台といえる。
 筑波大学の講座は、今後も継続されることが期待され、2015年度以降はさらに講義内容に磨きをかけて臨みたいと考えている。


講義風景