活動会員のレポート

日本語を教えてみませんか?
~日本語教育を学び、実践する6ヵ月~

  ABIC日本語教師養成講座講師 有賀 ありが 理恵 りえ




 「日本語教師」という仕事をご存じだろうか。この仕事をしているとよく「国語の先生ですか」と聞かれるがそうではない。日本語を母語としてではなく、外国語として学ぶ学習者のための教師なのである。続いて「外国人に日本語をどうやって教えるのですか」「英語が話せなくてもできますか」と聞かれる。その疑問にお答えするのがABICの日本語教師養成講座である。
 この講座では「直接教授法」といって学習者との媒介言語を使わずに、日本語を日本語だけで教える方法を学ぶ。媒介言語を使わないのでそれなりにテクニックが必要だ。ジェスチャー、絵カード、さまざまなドリル、また視線の配り方や板書のタイミングなど、教育の現場で実際に教師が使っているテクニックを惜しむことなくお伝えしている。
 半年にわたり毎週1日、朝10時から夕方の5時まで日本語教育について学び、考え、実践する。週に1日といっても、課題の文型に対し教案、教材全てを準備しておかなければならないので、週の残り6日も遊んでいるわけにはいかない。また教案はチーム、ペアワークで練り上げるので、講座に出ていない日もクラスメイトとの話し合いは続く。他にも教室を出て外国人の視点で街を歩く「屋外見学」、日常生活で見る日本語の標識や注意書きを「やさしい日本語」に書き換える課題発表など、アクティブに日本語教育について考える半年間である。
 この講座は座って理論を聞いている時間は多くはない。もちろん日本語教育についての基礎理論は学ぶが、メインの授業は実践授業である。与えられた文型を基に毎回自分が教師になった想定でクラスメイトを相手に授業を行う。お台場にある東京国際交流館で行われている日本語教室を見学し、模擬授業をする機会も与えられている。実際の外国人学習者を相手に授業をすると、頭では分かったような気持ちになっていても、準備したことがその通りに使えないことや、分かるだろうと思って話すことが理解してもらえないなど、予期せぬ事態に次々とぶつかる。それが受講生の皆さんの刺激にもなり、次の授業づくりの指針になる。
 こうして半年を過ぎる頃、「どうやって教えるのだろう」という疑問に受講生一人一人がその答えを見つけ、それを実際の教育現場で試す自信が育まれているように感じる。事実、多くの修了生が修了後に日本語教育の現場に入っていかれる。地域の日本語教室や海外に派遣されている方など活躍の場はさまざまだ。実は修了後も多くの受講生の方から講師に質問が寄せられている。質問は私たち講師の頭を悩ませるものも多く、その時は既に受講生が講師と同じ「日本語教師」となっていることを感じるうれしい瞬間なのである。日本文化がさまざまな形で国外へ出ていき、日本に興味を持つ外国人が日本を訪れる今、まだ日本語教師の数は十分ではない。言語、異文化、人と人との交流にご興味のある方、ぜひ一度日本語教師養成講座をのぞいてみてください。