活動会員のレポート

国際化社会における英語によるコミュニケーション能力の重要性について
―和歌山県立那賀高等学校国際科での出前授業―

招和法律事務所 弁護士  岡井 おかい 加女代 かなよ


授業の様子

1.私とABICの関わり
 私とABICとの関わりは、ABIC会員からお誘いいただき、登録をさせていただいた2019年10月からである。
 私は、現在、弁護士として活動しているが、大学卒業後の留学、弁護士登録後のロースクール留学(米国カリフォルニア州)の経験がある。この経験に基づき、和歌山県立那賀高校国際科1年生に、英語とキャリア形成についてお話をさせていただく機会を得た。

2.那賀高校国際科での出前授業
 那賀高校からいただいた授業テーマは、1)英語学習とキャリアデザイン、2)英語プレゼンテーションについて、であった。
 私は、1)の英語学習とキャリアデザインというテーマについて、そもそも現在の高校1年生が今後大学、大学院を経て4年ないし6年後に社会へ出ていくとき、キャリア形成に英語は必要か、有益かということはそもそも論じるまでもないという考えであり、そこから話を始めることにした。

3.今の社会において英語は必須なのか
 この問いに対し、私はまず生徒たちに「Absolutely, yes」と答えを示した。しかし、授業を聞いている生徒たちがどこまでこの感覚を共有しているのか疑問があった。「現代は国際化社会であるから英語は必須である」という漠然とした議論は理解できるとしても、英語学習に対するモチベーションにはつながらない。
 そこで、私のこれまでのキャリア形成と英語との関係を説明した。私は、弁護士になる前に、製薬、法律、金融業界で仕事をした。各業界において、英語は必須であり、国際化がより進んだ金融業界では社内のコミュニケーションを含めて仕事のほとんどが英語で行われていた。この経験から、「英語がキャリア形成にとって必要か」という議論はすでに意味がなく、コミュニケーションツールとしての英語能力をもって何をするのか、どのようにキャリアを形成するのかがより重要であると結論づけた。

4.「Keep looking, Do not settle」
 英語がキャリア形成に必須かという問いに対する答えを出すよりもはるかに難しいのは、将来何をするのか、何がしたいかを見つけることである。これは簡単な問いではない。しかし、この答えは、自分で見つける以外にない。
 まだはっきりとした答えのない生徒たちに何らかのヒントになることを期待し、Apple Inc. の創始者であるSteve Jobsのスタンフォード大における卒業式のスピーチを紹介した。彼はこのスピーチの中で、興味の持てることにいろいろとチャレンジすることの必要性を述べた。挑戦の時点ではそれがどこにもつながらないように思える。しかし、それらの経験の一つ一つが将来1本の線となって自分のやりたいことにつながる、つまり経験は決して無駄にならないと述べた。さらに、彼は本当にやりたいことを探し続けること、それを見つけるまで決して妥協しないことの大切さを述べた。この先人からのメッセージが高校生に響いたとしたら幸いである。

5.日本に居ながらにして英語漬けの生活は可能か
 最後に英語の能力を上げる方法について話した。私の英語能力が飛躍的に伸びたのは留学時であったから、日本の高校生全員に対して汎用はんよう性のある方法ではない。しかし、留学時に英語力が伸びるのは「英語漬け」になるからであり、その方法を日本でも実践することはできる。
 毎日を英語漬けにする私の毎日の学習方法を紹介した。近年はPodcastで海外のニュースチャンネルを聞くことができるし、世界のニュースを同時に英語で読むことができる。そして、知らない単語は英語で調べ、英語で意味を理解しインプットすることの大切さを説明した。日本にいても自分を英語漬けにすることは難しくない。やる気の問題である。

6.最後に
 授業の最後に生徒に、「The world is your oyster」という言葉を贈った。まさに、これからの世界は彼らのものである。1人でもこの授業をきっかけに自分の将来を考え、キャリアを切り開いてくれる生徒がいれば幸いである。