活動会員のレポート

地域企業への経営支援活動

紙屋 かみや つかさ (元 日本電気)


ジェイテックでの執務(青森県六ヶ所村)

仙台城跡・伊達政宗公騎馬像
(宮城県仙台市)

 私は情報通信の企業で営業や関連会社の経営に携わり、定年退職後、自宅のある仙台に帰還したが、30年も離れていると地域社会とのつながりが希薄になっていた。つたない経験だが、地域社会へ何か貢献したいと考えていた時、会社の先輩からABICを紹介され2020年1月に入会した。
 2022年5月に青森県六ヶ所村にある株式会社ジェイテックという会社を紹介していただき、7月末から勤務することになった。ジェイテックは使用済原子燃料の再処理を行う日本原燃株式会社の子会社で再処理工場の施設や設備の保守点検や運転を行っている。原子力発電では、一度使ったウラン燃料(使用済核燃料)を再処理することで再利用可能なウランやプルトニウムを取り出すことができ、繰り返し原発の燃料としてリサイクルが可能になる。ウラン資源の有効利用になり、エネルギーの長期安定供給にもつなげることができる。原発の稼働については東日本大震災以降、賛否両論はあるが、現実問題として存在する使用済核燃料の扱いは避けては通れず、海外に依存している再処理を国内で行うため、ジェイテックはその施設や設備の安全確保や安定稼働を維持する大変重要な事業を行っている。
 私は建設業の経営管理業務責任者の資格を持っていたので声が掛かったのだが、ジェイテックは長年培ってきた高い品質の保守点検業務を可能にする技術を持ち、それらを一般企業にも提供したいと考えており、その営業推進も支援することになった。私は情報通信業界の経験しかなく、設備メンテの建設業界は門外漢だが、いわゆるB2B営業の基本的な業務プロセスや案件管理手法の確認や営業施策の立案について支援をしている。
 ジェイテックが保有する提供サービスは再処理施設に関係する技術が基盤になっているが、レーザーによるさびの剥離サービス、回転装置の故障予想にもつながる振動診断サービス、短時間で行える蓄電池容量診断サービス、ドローンでの点検サービス、排水管の液体を凍結させて工事を行うアイスプラグ施工サービス、配管の異常事象体感訓練装置など、一般企業のプラント施設でも使用可能なものが多く、技術の横展開では十分に適用できると考えられる。
 ジェイテックにとっては一般市場への進出は始まったばかりだが、社員が体現している安全対策意識や品質の高い業務遂行能力は競争力の源泉になると思われる。会社の企業理念である「技術と人を、作る企業」が具現化できるように営業支援や経営支援で貢献できればと考えている。
 経営支援ということでは、私は独立行政法人中小企業基盤整備機構 東北本部の中小企業アドバイザー業務の委託を受けて、中小企業の経営支援に携わっている。経営課題を相談された中小企業に対して、ハンズオンでの事業戦略や経営計画の策定支援、販路開拓等のマーケティング企画支援などを行っている。中小企業は独自で開発した優秀な製品があるのだが、肝心の売る施策が整理されていないケースが多い。現在支援をしている会社はデジタルサイネージのシステムの開発販売を行っているが、販売面で苦戦している。機能面ではよくできているが対象市場の絞り込みや販売施策を見直す必要があり、社長の意向を確認しながら事業戦略の再構築を検討している。
 縁あってABICの会員になり、また、中小機構とも関係ができ地域企業の経営支援に携わるようになった。地域社会ではシニア世代が貢献できる分野が多くあると感じる。つたない経験だが、地域企業への関わりを通じて地域社会の発展に貢献できればと考えている。このようなご縁をつくっていただいたABICには改めて厚く感謝申し上げたい。