活動会員のレポート

「多様性と地域のつながりのアフリカ」の紹介

山浦 やまうら 信幸 のぶゆき (元 国際協力機構)


前半はイスラムらしいモロッコの民族衣装ジュラバで

後半は赤道直下のガボンの各民族のデザインを使ったシャツで

 私は知人の紹介でABICの日本語教師養成講座を受講し、東京お台場の国際交流館で日本語講師として活動しているご縁から、この活動の他に、前職でアフリカ3ヵ国に駐在したこともあり、新座市の公民館で実施しているシリーズ講座「世界の文化を学ぶ」の中でアフリカを紹介する機会を頂き、2023年9月に実施した。
 私のアフリカ滞在は延べ9年になったが、もちろんアフリカの専門家ではない。加えてこのシリーズ講座でこれまで取り上げられたのは、ブラジル、イラン、サウジアラビアそしてインドといずれも個々の国々であったが、今回はアフリカ全体の紹介であった。実を言えば、この講座へ果たして参加者がいるのかと少し心配であった。というのも日本から見るとアフリカは遠く、アフリカの情報といえば内戦、クーデターや自然災害など一過性でネガティブなものが大部分であり、恒常的な関心を呼ぶものが乏しいからである。しかし参加者に事前に聞いたところ、皆さん外国に関心があり、このシリーズ講座に続けて参加されている方が何人もおられ、中でも2人の方はアフリカ(ガーナ、エジプト)に行ったことがあるとのことであった。
 話の組み立てとしては、まず滞在した3ヵ国を紹介。3ヵ国がアフリカ北部のモロッコ、サハラ砂漠の南縁のニジェール、赤道直下のガボンと、それぞれ特徴的な条件下にあるので、アフリカ全体を理解する上で役に立ついくつかの切り口を基に話を進めた。
(1)モロッコ
ジブラルタル海峡(最短で15km)を挟んでスペインと向かい合っているので貿易、人的交流(出稼ぎ、観光)が発達。雨にも恵まれ農業も盛ん。 (2)ニジェール
サハラ砂漠の南の縁に位置するので降水量が少なく、農業は主に限られた作物(トウジンビエ、玉ネギなど)しか栽培できない。内陸国で天然資源も限られているので世界最貧国の一つである。しかし、昔からセネガルからスーダンに至る砂漠の南縁およびサハラ砂漠を越えてモロッコやリビアに至る交易路が存在している。またギニア湾沿いの各国とは出稼ぎや貿易でつながり、加えて地域共通通貨が確立しているので閉塞感はあまり感じない。 (3)ガボン
熱帯雨林が国土の大部分を覆う人口200万人ほどの国で、原油を算出することから所得が格段に高い。ただ、石油収入を活用した開発事業は地理的条件やいわゆる「資源の呪い」のかせもあり必ずしも順調ではない。かつては南アフリカの反アパルトヘイト支援を行い、また地域内の紛争の調停役を務めるなど、地域の中で一定の地位を占めている。  以上3ヵ国の特徴を踏まえ、アフリカを理解するため以下の切り口でお話しさせていただいた。
 多様性として、
  ①地理的条件(欧州など市場へのアクセス、沿岸国と内陸国)
  ②気候条件(多雨国と少雨国)
  ③天然資源の有無
 地域のつながりとして、
  ①北部(対欧州、地中海沿岸国、アラブ諸国)
  ②中西部
  ③南部(南アフリカを中心とした流通網)・東部(対アラブ諸国、環インド洋諸国)

 終了後のアンケートを見ると、おおむね関心を持って聞いていただけたようであった。私の話が、参加者の皆さまのアフリカへの関心をより広げられたら幸いである。また、この機会を与えていただいたABICの関係各位に改めて感謝する次第である。