マンスリー・レポート No.18 (2002年4月)
活動会員からのレポート
  ポーランドの中小企業支援
    山本 寧雄(元 ニチメン・在ザグレブ)
シュレム市の
中小企業経営者への
講演“カイゼン”

 私は1998年からクロアチアの首都ザグレブでコンサルタントを核とするささやかな自営業を営み、中東欧地域と日本の間の人や文化の交流に努めているが、この度JICAからポーランドに派遣され、本年2月から3月にかけ1ヵ月間、中小企業の支援を行った。

 ポーランドは2004年EU加盟を目標に官民あげて努力を続けており、中でも中小企業の競争力強化が重要な課題になっている。JICAはポーランド政府の要請を受け、現地調査した結果、98年に中西部コニン県の地域総合開発計画を提出、それに基づきこの地域にTQM(Total Quality Management)・経営戦略・マーケティングの専門家を派遣して中小企業経営者に技術を移転してきている。

(注)コニン市はポーランドの中西部にあるヴィエルコポルスカ州の一都市である。同市は古い歴史のある小都市であったが、第2次大戦後すぐ褐炭露天鉱の開発を契機に、それを原料とする発電所が2ヵ所にでき、さらにその電力を使ったアルミニウム精錬工場が操業を始め、各地から集まった従業員による新産業都市として成長を続けてきた。しかし、褐炭鉱の可採埋蔵量に限りがあることから、新たな方向を模索している。周辺に、有名なカトリック巡礼大聖堂、美しい湖沼群、温泉鉱脈などがあるので、観光開発に目を向けている。ワルシャワから200km、ベルリンまで260kmと近く、好立地である。

 今回は、市場経済に向けて経営者の意識改革を呼びかけ、TQMやカイゼンなどの紹介を通じ、会社運営の技術をさらに向上してもらおうというのが狙いである。コニン市にある地域開発公社に席を置き、社員たちと共にポズナン地方各地を訪れ、講演と意見交換を行った。

 公社の社員は20代から30代の女性がほとんどで、きびきびと立ち働く姿が印象的である。社会主義は幾多の肯定面を持ちつつも国家計画指令経済・配給経済を主因とした非効率・低生産性・低品質により経済が自滅したことを皆で想起し、その対極にある市場経済で求められる資質に焦点を当て、EUで競争力のある企業として成長する方途を考える場とした。ポーランドの否定面よりも、コペルニクス、ショパン、キューリー夫人等を生んだ高い文化、技術水準や、人的資源、天然資源、広い農地、有利な地政学的位置などを生かすべきことを話し合った。また、仕事を進めるうえでの意思疎通の技術面で旧社会主義諸国の人々は大きな問題を抱えているので、その問題点を率直に指摘し早急な改善を助言した。

 ISO認定取得は世界の主流になっているが、ポーランドでも同様である。マニュアル完備のISOに比し、日本の融通無碍な“人を育てる”“従業員の自発性を生かす”などという手法は、この地域で理解の容易でないことを再認識させられた。しかし、根気よく説明し意見交換するうちに、TQMやカイゼンはISOに反するものではなく、むしろ補完・統合して生産性をさらに向上しうるものであることを少しは分かってもらえたようである。

 ポーランドでは“第二の日本になろう!”とのスローガンが唱えられている。このため、貧しい日本が経済成長した要因を日本の自然環境や歴史・文化的背景から掴み出して説明したが、それは日本型経営の背景説明にもなり、セミナー参加者の理解を得られたようである。この貴重な貢献の場に推薦いただいたABICと経済産業省に感謝するとともに、ポーランドの発展を心から願うものである。

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