マンスリー・レポート No.21 (2002年7・8月)
アフガニスタン・カブールからのレポート
    特定非営利活動法人 日本紛争予防センター アフガニスタン代表事務所 代表
笹井 英毅(元 丸紅)
NGO出身のStanekzai通信大臣(左)とともに
 2002年3月にアフガニスタンの首都カブールに赴き日本紛争予防センターの現地事務所の開設準備を終え、4月に赴任された笹井さんから現地レポートが届きました。カブール街中いたるところ破壊された建物が放置され、治安もまだ不安定で、現地職員6名のうちガードマンが3名。停電40時間で冷蔵庫の食料が全部だめに。赴任して体重が7キロ減ったが、健康診断の結果、多くの数値が正常に戻ったという良い事もありとのこと。

アフガニスタン復興・平和構築支援活動

 カルザイ大統領は6月下旬開催されたロヤ・ジルガ(国民大会議)において圧倒的多数の支持を得て、向こう約2年間暫定政権を担うことになったが、閣僚の任命に当たっては民族、種族・部族間割当数問題、任命閣僚ポストに対する不満、省再編による閣僚数の減少等々当初目標とした構想の多くを実現する事ができず、結果的には、主要4民族の実力者(パシュトゥン、タジク、ハザラ、ウズベック)を副大統領職に任命し、従来と変わらない29閣僚構成となった。この内、NGO出身の大臣が5名任命され、学歴、経歴共にその分野の出身であり、今後の復興計画推進にはテクノクラートを中心にした舵取りが期待されている。

 治安問題に関しては、首都カブールはISAF(29ヵ国より構成されている国際治安支援部隊)の駐屯もあり一応治安は維持されているが、地方においては多くの武装兵士による民間人、国連職員、国際NGO職員に対する暴行、強姦、略奪、殺人が報じられている。これら事件の特徴は武装兵士による事件であり、現場で逮捕されない限り犯人逮捕には繋がらないのが大方である。

 このような状況下、日本、欧米を中心とした政府機間、国連機間、国際NGO団体(政府登録約180団体)、アフガニスタン・ローカルNGO団体(政府登録約400団体)が、それぞれ人道的(物資)支援、復興支援活動に従事しているが、特に人道的(物資)支援活動は、その目的より地方での展開が中心となるため、常に身の危険を冒しての活動を余儀なくされているのが実情である。

除隊兵士のための職業訓練

 日本紛争予防センターは本年4月アフガニスタン首都カブールに事務所を設立し、政府認可を得て活動を開始した。活動目的は人道的(物資)支援活動と多少の距離を置いたリハビリテーション(復興)である。除隊兵士の社会復帰を促進するための職業訓練、平和教育にウエイトを置いた農村地域女児初等識字教育、地域指導層を対象とした平和構築・啓蒙ワークショップ、等々である。成果がすぐに表れない地道な活動ではあるが、四半世紀に亘り紛争・混乱に巻き込まれたアフガニスタン復興のプロセスには不可欠であるとの趣旨より活動を続けている。最近においては、国連機関、国際NGOもこの分野に注目すると同時に具体的展開を始める方向が高まっている。

 除隊兵士のための職業訓練は、当センターが最も力を注いでいる分野である。既に5月より6ヵ月間の大工コース、レンガ工コースにて約30名の訓練を実施しているが、本年秋口より、新たにローカルNGO 2団体をパートナーに追加し、訓練コースの増設(配管工コース、ブリキ職工コース)および受講者の増員を図りながら取り組む方向で進めている。この職業訓練で知識、技術を習得した受講者はローカルNGOが手がけている学校、住宅修復現場に従事することができ、また、復興段階における需要が高まっていることより具体的成果が見られる分野である。

女子教育の再開
教室もなく野外で授業を受ける少女たち
カブール近郊にて

 農村地域女児初等教育は、識字教育と併行し平和教育にそのウエイトを置くように進めている。アフガニスタンの女性の就学率は、タリバン時代に一切の女子教育が禁止されたことによりさらに低いものとなり、それに加えて、カブール、一部の都市部以外の農村地域においては公立小学校の数が少ないことと、ほとんどの親は女児を学校に通わせず家事をやらせるので、就学率はさらに低下している。

 アフガニスタンでは、ムーラ(宗教者を中心とした結束)、シュウラ(地域単位の結束)の力が依然として強く、例えば、自分の子供(女児)だけを就学させることは、村八分的扱いに繋がるケースが少なくない。

 この女児の識字率向上と平和教育に対し、当センターはカブール近郊ファルザ地区において大手ローカルNGOに対する資金支援と共に協同にてコミュニティ復興に取り組んでいる。

平和構築のためのセミナー
6月26日(中央筆者)

 当地域指導者を集めた平和構築ワークショップ(地域より選別された、教育関係、社会福祉関係者が、欧米の大学院にて紛争予防学を専攻したファシリテイター〈アフガン人〉より1週間に亘り集中講義、討議を通しての啓蒙教育)を2回、5月と6月に実施し、受講者は地域に戻りそれぞれの活動に入っている。この種のセミナー開催に際しては、できる限り多くの民族・種族が参加できる人選をするよう地域指導者に働きかけ、継続的開催、受講者に対するコーチング(受講者のその後の活動に対してアドヴァイスし、指導していくこと)、モニタリング(活動成果の追跡)の徹底を図っている。

 アフガニスタンは、四半世紀に亘る混乱の後、国際的関心の下、民主化による国家統一の方向に動き始め、海外に逃避していたテクノクラートが復興の手助けに貢献したいとの自らの意志で、海外で築き上げた安定生活を放棄してまで帰国する数が日毎に増えている。しかしこの反面、最近において、カルザイ大統領のエクスパトリエイト登用偏重により混乱の期間も国外に脱出せず、国のために闘ったと自認する層の多くより、欧米偏重に対する不満が芽生え始めており、この問題をカルザイ政権が無視したままで進むと、各省庁はじめ多くの行政機関のテクノクラートの勤労意欲減退に繋がり、今でさえも行政機能が麻痺に近い状態がさらに進み、カルザイ暫定政権が目指す民主化による国家統一に向かってのアフガン人によるアフガン人のための政治(復興)の道程は全く見えてこなくなる可能性も潜在する。

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