マンスリー・レポート No.27 (2003年2月)
活動会員のレポート
  あいち投資サポートオフィス
外国企業誘致アドバイザーに就いて
   

海野 清(元 三菱商事)

 愛知県は県内へ外国企業の進出を促す目的で、昨年6月、県産業貿易振興会内に当該企業に対する情報提供・相談の一元的窓口「あいち投資サポートオフィス」を開設した。活力ある企業の誘致に取り組み、地域のさらなる国際化と県内企業へのインパクト、新しい技術・経営の導入が役割である。そこで海外勤務・貿易実務経験のある民間人が外国企業誘致アドバイザーとして配置されることとなった。ABICからの推薦もあり、縁あって小職がその任を担って約半年経過したのを機に活動状況等をご紹介させていただくこととする。

 低迷が続く景況、加速する海外生産シフトなど環境は厳しいが、海外には日本市場はやはりビジネスチャンスを多々秘めた先と映っているはずである。まずは本窓口を幅広く活用してもらうことが肝心であり、内外各方面へのPRからスタートした。

 それが奏効してか、開所早々から千客万来であった。拡販のためのDistributor探し、テーマパーク建設、IT関連(教育センター、技術者派遣)、医療関連(含バイオ)でのパートナー探し、浄水器の日本での製販F/Sのための情報提供、市場調査での来日応対など、さらに県所有地の売り込み、海外ミッションの受け入れ、セミナーへの出席、既存外国企業への県内進出勧誘活動等々。またアフリカ方面より来るうさんくさい秘密資金の山分け話、外国企業日本進出をテーマとする卒論作成のための学生への情報提供など、種々雑多である。舞い込む話は直球、変化球、ワイルドピッチありで、それは商社で培ったはったりと図々しさで適宜交通整理し、対処している。

 県所有地に工場建設を図り、雇用機会を広げるのが究極の目標である。その意味では、上述の通り、その前段階の話がほとんどの現状で、成果が上がっているとは言い難いが、お役所仕事の感を抱かせず、即返を信条に質の高いサービスを提供し、段階的に着実なフォローをし、信頼のおける窓口と認知してもらうことが、口コミを創出、ひいては将来的な直接投資につながるものと考えることにしている。そのためには、庁内はもとより他関係各機関との横展開をいかに図れるかに懸かっているともいえる。

 一方、客観的に見て当県は、恵まれた自然環境、産業の集積地、日本の中央に位置し全国への好アクセス等の強みはあるが、各自治体とも地域経済の浮沈を賭け誘致を競い合う中、優遇策もさして差異がないとなれば、地域の魅力に加え地元の熱意が成功の鍵となるであろう。無料の公的サービス機関にアクセスしてくるのは主に中小企業である。頼りにされるのは願ってもないのだが、時におんぶに抱っこのケースもあり、サービスの範囲をどこで線引きすべきか迷うことがあるものの、従来の殻を破り一味違う、一歩踏み込んだ誠意あるサービスの提供に努めている。

 他方、三大都市圏を形成しているにもかかわらず、当県は知る人ぞ知るで、あまねく知名度が行き届いていない面があり、これをいかに高めていくかは今後の課題である。2005年の中部国際空港開港、愛知万博開催という二大プロジェクトは大きく羽ばたく絶好の機会であり、せめて助走路整備の役目を果たし、通算して最も長く住んだことになる当地で、少しでもお役に立てればと願うものである。現役を退いてからも技術の進歩は目まぐるしいが、おかげでITイリタラシーにもならず、それなりに充実した多忙な日々を送っている。

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