マンスリー・レポート No.36 (2003年12月)
活動会員のレポート
  経済統合の流れの中で
    独立行政法人 国際協力機構 専門家
パラグアイ国商工政策アドバイザー
    佐藤 一雄(元 三菱商事)

 なぜパラグアイはメルコスール(南米南部共同市場)に加盟したのだろう。設立後20年を経てASEAN10の1.5倍のGDP(8,000億ドル)に成長した共同市場の中で、パラグアイは経済不振にあえいでいる。伝統的一次産品へ依存した産業は市況に左右され、域内共通関税下でブラジル、アルゼンチンとの競争は厳しく、メリットを見いだしにくい。経済地域統合への趨勢は避けられないが、厳しい現実である。

 かかる情勢下、独立行政法人 国際協力機構(JICA)より当国商工省に商工政策アドバイザーとして派遣され1年になる。非伝統品の輸出強化、車両産業育成、輸出保険制度創設、産業環境規制、マキラ活動支援、中小企業育成支援等と、期待される政策メニューは多岐にわたる。民間企業から政府機関の立場に変身したが、長年の商社勤務を通じて得たさまざまな産業との接点や、営業から管理までの経験を応用できる分野は多く、カウンターパートから出てくる抽象的な施策を、ビジネスの観点から実践的なシナリオに書き直す作業に大いに役立っている。

 経済協力(ODA)も具体的成果を求められている。プロジェクト目標や成果を設定し、これを経済、政治指標に結び付けて評価する技法は、実態が把握し難いだけに悩ましいものがある。これに比べ、利益と企業価値付加の達成という企業ルールは、厳しくも、具体的財務諸表や株価に示される万国共通のデジタル言語であり、優劣勝敗のはっきりした自浄作用は潔いものと映ってくる。

首都アスンシオンは
人口50万人の近代都市

 この8月より発足したドゥアルテ新政権への期待は大きい。国家支出の再編成、税源徴収の強化、公務員の削減、金融機関の統合と整理、経済活動の正常化・透明性の向上、司法機関粛正などをめざしている。何よりも国内、国際的な信用を取り戻す原点から出発し、投資を誘引し、雇用を確保して貧困から脱却する必要に迫られている。また、比較優位の見いだしにくい産業を抱えた内陸の小国にとって、政治的対外折衝の成否は国の運命を大きく左右する。

 地方に出張すると、都市化した首都アスンシオンとは異なり、地平線まで見渡すかぎりの大豆畑や、牧草地に圧倒され、あらためて、この国の原動力は豊かな大地に支えられていることを認識させられる。

 なぜパラグアイはメルコスールに加盟したのだろう。将来の産業構造の変革を見据えた舵取りがいかに重要か、自由貿易協定の大きな流れの中で苦慮している日本と置かれた状況は異なっても、重なって考えさせられることは少なくない。

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