マンスリー・レポート No.37 (2004年1月)
活動会員のレポート
    JICA長期専門家としてパキスタンに2001年2月に赴任された玉木氏の現地レポートが届きました。
  パキスタンこのごろ
    パキスタン政府投資庁投資促進アドバイザー 玉木 興きょう(元 トーメン)
日本の商社が合弁で取り組む
電力会社を訪問
筆者(左端)と小川清一氏*(右端)

 ABICのお世話でJICA専門家として、パキスタン政府投資庁(BOI)の仕事に携わって、3年近くになろうとしている。この間、9.11に始まるタリバン戦争や数々のテロにまつわる事件でパキスタンは大きく揺れ動いた。プラス面もマイナス面もある。日本中の方にパキスタンの存在を認めてもらったが、結果的に悪いイメージをもたらしてしまったことは、私の仕事には大きなダメージでもある

 米国はムスリム狩りと称して、イスラム名の預金口座を根こそぎ洗い出したため、逃避資金や出稼ぎ労働者の預金が一斉に、むしろ安全な母国に還流した。このため、外貨が戻りだし、タリバン戦争の前には4億ドルにも満たなかった外貨準備が今では118億ドルを超える、いわゆる9.11効果が出ている。しかしこの外貨のいきどころがなく、株価は3倍に膨れ上がり、土地は暴騰、わが国のメーカーしか進出していない自動車産業の生産台数は2倍となった。しかも乗用車は納期が長いので、早めに買って転売するとプレミアムがついてその方が儲かることもあるため、投機対象になっていて暴利を得ている人もいる。

 外交団や国際社会はマクロ経済が大きく改善したとしている。政府は政策の勝利と自慢するが、ほかならないタリバンのおかげと言った方が分かりやすい。実際に政府は何をしたわけでもない。このご時勢で株価が3倍にも上がる国は見当たらないであろう。BOIは投資環境が整ったと喜んでいるが、実際の投資は前年同期より半分ぐらいに落ち込んでいる。

 一方、対外貿易は徐々に伸びているし、IMFは今や優等生扱い、BOIには外国のミッションが連日訪れるので、必ずしも見捨てたものでもない。冷静に見てもパキスタンは経済発展の歴史的なチャンスを迎えていると言える。テンポは徐々であるが千載一遇のチャンスと言っても過言ではない。

 パキスタンと言えば日本だけでなく諸外国では最悪に近いイメージのままと思われるが、実際には危険を感じることはないし平和そのもの、ゴルフも宴会も楽しんでいる。

 しかし、経済起爆の道のりにはかなりの「たら」が付くことも認識している。経済のベースにある密輸体質、そこからくる腐敗構造、脆弱な国家財政、先に述べた国家イメージ、官僚主義、封建的な社会構造などこれらは一種の「肥だめ」要因となって、金回りが良くなると一見経済成長につながるように見えるが、バブル的な現象をもたらすか貧富の差を拡大するだけの懸念材料でもある。何しろ、貧困率は上昇し40%とも言われている。発展途上国は主にその経済的な脆弱性ゆえに後進国であるが、しかるにさまざまな問題を内蔵するのは当然である。前途多難であることは言うまでもないが、ムシャラフ政権の国民からの評価は安定している。林の向こうに光が見えそうな状況で、一歩一歩前進の後押しができることは大きな生き甲斐でもある。

*小川氏は、ABIC活動会員で、パキスタン政府中小企業庁に中小企業振興のためJICA専門家として2003年1月に赴任されました。

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