マンスリー・レポート No.40 (2004年4月)
活動会員のレポート
  カイロ貿易研修センターへの短期派遣体験記
    ジェトロ短期専門家 伊賀山 欣也(元 丸紅)

 輸出振興はエジプト政府の主要経済政策の一つであり、カイロの貿易研修センター(Foreign Trade Training Center、以下FTTC)は貿易実務に携わる人材の育成を目的としてJETROの協力の下に2001年に設立された研修機関である。立ち上げ以来、日本から2名の方々が長期派遣員として常駐して運営に参画している。

 2003年1月にJETROがABICを通じて短期派遣員を募集した際の派遣目的は、「貿易取引におけるリスクマネジメント」をテーマに研修プログラムを作成し現地人講師育成のための実地指導をする、というものであった。研修期間は2003年3月中旬の2週間、使用言語は英語。私は現役時代の大半を管理部門で働きこのテーマにも関与したので多少の知識と経験があったとはいえ、現地の輸出業者の実情やニーズに合う講義がはたしてできるだろうかと不安であった。しかし、エジプトは私にとっては未踏の大国、また、イスラム世界への関心もあり、この機会に是非行ってみたいという願望は抑えられず、思い切って応募した。

 私の派遣が決まり、FTTCとe-mailで交信した結果、「貿易取引におけるリスクマネジメント」をテーマに3日間、毎日4時間の研修会をするが、1日は特定のテーマでエジプト人専門家が、2日間は全般につき私が講義を行うこととなった。その他の日はFTTCでの打ち合わせのほか、研修に先立ち現地の実情を知っておくために経済貿易省、輸出企業、銀行、輸出保険公団の訪問にあてることにした。日程が決まった後は連日自宅のパソコンの前に座り、朝から晩まで教材作りであった。

研修会
右端がH君、中央がFTTC所長、左が筆者

 研修会には民間企業・官庁関係合わせ約30人が出席した。講義の活性化のため、私はその場で受講者を指名して質問や発言を誘導したところ、他の受講者からも次々に意見や体験談が出て、期待以上の効果があった。女性も数人出席していたが、積極的に討議に参加した。日本国内のこの種のしかも外国語による講習会で、これだけ活発に質疑応答がなされるであろうか。

 なお、滞在中に対イラク開戦があり、当日の夕刻はカイロの中心地も緊迫した空気に覆われ、米国と英国の大使館をエジプト兵が蟻の這い出る隙間もなく取り囲んで警備しているのを目撃した。

 帰国後は教科書の編集作業のために再びパソコンに向かう日々が続いた。その間現地側でも、総合商社A社の支店長のご協力によりその現地社員H君を講師に起用することが決まった。実は彼が前回の研修会に出席していた時に私たちは目を付けていたのである。

 そしてFTTCから私に再度の訪埃を要請してきた。今回の目的は現地人講師による研修を軌道に乗せることで、2003年12月の前半約1週間の滞在であった。テーマと3日間の研修会開催は前回と同じであるが、今回はH君が主役で、私の役割は彼を指導することと、講義中彼の横に坐って質疑応答時に口を出すことであった。

 研修会は大成功、H君は見事に大役を果たしてくれた。彼の英語力は当然優秀であるが、アラビア語およそ8割、英語2割の熱のこもった講義で、官民・男女混合30名余りの受講者は極めて積極的に質疑応答に参加し、居眠りする者は皆無であった。今回の受講者の中からもまた一人講師候補者が見つかり、これでこのテーマの研修会が定着するめどがついた。

ギザのピラミッド・スフィンクスにて

 さて、肝心のエジプト文化探訪と民情視察のことであるが、カイロは私の想像以上の大都会であった。しかし町の人々の服装はとても質素。最近の物価上昇により生活は楽ではないはずだ。活動スケジュールの合間に念願のピラミッド見物が実現したが、ギザのピラミッドでは、日本人を見かけると「ヤマモトヤマ!」と叫びながらラクダ曳き達が次々と寄って来て自分のラクダに乗れと迫る。どんな意味で使われているのかはともかく、この商標はエジプトではそれ程にポピュラーなのだ。しかし最も印象に残ったのは、人なつこい、生き生きとした少年少女たちの笑顔であった。

 短期間ながら2回にわたるこのプロジェクトでの勤務は私自身の勉強にもなり、貴重な体験であった。

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