マンスリー・レポート No.42 (2004年6月)
活動会員のレポート
  埼玉県中小企業振興公社の
    ビジネス・インキュベーション・マネジャーに就任して
    小畑 克之(元 丸紅)

 ABICの推薦を受け、2003年6月16日よりビジネス・インキュベーション・マネジャーとして(財)埼玉県中小企業振興公社に勤務している。当初、私にとってはビジネス・インキュベーションそのものが、全く未知の分野であったが、小規模の起業家を支援するアドバイザーのような仕事であり、元商社マンの経験を生かしかつ社会貢献もできる職場と考えて、丸紅を退職以来1年3ヵ月の空白はあったが、挑戦することにした。

ビジネス・インキュベーションとは

 そもそも、インキュベーションとは“抱卵”、“孵化ふか”、“培養”、“潜伏期”を意味するが、米国では起業家支援事業の誕生とともにこの言葉を借用して、“創業から自立できるまで起業家を支援する手法”を「ビジネス・インキュベーション」と称するようになったようだ。1970年代の米国は大変な不況下にあったが、このビジネス・インキュベーションが米国の経済再生に非常に大きな役割を果たしたそうである。あの有名なマイクロソフトのビル・ゲイツは最も成功した事例の一つだと言われている。

 一方、日本ではバブル経済崩壊後、アジア諸国の発展に伴う競争も加わり景気の低迷を余儀なくされてきたが、その再生のため、国は特定地域の特定の産業振興を図ることから、地域経済の自立的発展を図る政策に転換し、99年には新事業創出促進法が施行された。その結果、中小企業支援策の一環として全国的に地方自治体を中核とする新事業創出のための支援機関が構築されてきた。これらの支援機関を中心に、全国的にインキュベーション施設入居者への支援が行われているが、直接日常的に起業家に接触し、経営全般にわたり相談に乗り、支援をするのがインキュベーション・マネジャーである。

 現在、日本には約400の公共・民間のインキュベーション施設があり、そのうち、270の施設にはインキュベーション・マネジャーないし同等の支援者が配置されている。日本新事業支援機関協議会(各地域における新たな事業の創出を促進することを目的とする経済産業省傘下の日本立地センター内の組織。一般にJANBOと言われている)はインキュベーション・マネジャーの養成・強化を現在積極的に推進しており、私も実質1ヵ月にわたる研修を受けた。

埼玉県中小企業振興公社が入っている埼玉県産業技術総合センター

当社のビジネス・インキュベーション事業

 当社は埼玉県川口市のSKIPシティにある。SKIPシティは埼玉県の新産業振興拠点として2003年2月に完成した。県内中小企業に対する技術支援のための「埼玉県産業技術総合センター」「NHKアーカイブス」等の映像関連産業施設、「川口市立科学館」等の施設がある。

 当社と同じ施設内に整備されたインキュベーション施設には、ものづくりを中心とする16社および映像関連産業18社の計34社が2003年4月から入居しており、当社はこれらの起業家の支援をしている。そのうちのものづくりの11社が私の支援対象である。高級オーディオスピーカーを開発・販売する企業、廃材を利用した木質ペレットを燃料とするストーブの開発・製造企業から半導体プリント基板設計・製造企業、ビル・工場の省エネ監視・管理システムの機器およびソフトウエアを開発・製造・製作する企業、光学機器の開発・製造企業まで入居者の製品分野は多岐にわたっている。大半は創業2〜3年のスタート・アップ企業で、市場価格より割安の家賃で入居しており、技術開発面では、県産業技術総合センターの技術支援も受けている。

 インキュベーション・マネジャーの職務は、当社新事業支援室の一員として担当職員2名とともに日常的に入居者と接触することにより、信頼関係を築き、コーチ役として入居者を支援することである。

 創業初期段階の常として、経営・資金・販売の問題等、スタート時の事業計画とは乖離かいりした状態に陥り苦労している入居者もある。外部の専門家(税理士、弁理士、弁護士等)も含んだ支援ネットワークを構築・活用して、時にはコーディネーション、時には自ら販売促進を支援するなど連日、問題解決に取り組んでいる。元気のある企業が大半であるが、一番の問題は販売の実現・拡大である。これは商社OBの経験が生かせる仕事であり、鋭意努力している。

 当社の使命は、入居期間の3年ないし5年内にこれらの企業が経営の基礎を築き、卒業、自立してもらうことである。結果として、企業業績の伸長により雇用の増大、法人税の増加につながれば、非常に喜ばしいことである。

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