マンスリー・レポート No.43 (2004年7月)
活動会員のレポート
  ある「環境に優しい循環型の社会」づくり
    ―環境対策は、裾野が広がらなければ、山は高くならない
    東大阪市産業振興センター 販路開拓コーディネーター 萬木 寛(元 丸紅)
テキサス州オースティンの環境対策に熱心なハイテク企業の関係者と(筆者右端)

米国大手ハイテク企業からの引き合い

 2003年から、クリエイション・コア東大阪で、中小企業の製品の販路開拓の手伝いをしている。そのクリエイション・コア東大阪の傘下企業の紙容器メーカーS社の商品紹介ページに、フラッシュ・メモリーでは世界の三指に入る米国のA社からアクセスが飛び込んできた。3月25日の第一報は、残念ながら本文が文字化けしてIユm very interested in xxxxと、要領を得なかった。止むを得ず発信者に対し、全文の再送を依頼。あらためて送られてきて初めてハイテク製品ではなく、A社の社員食堂用の組立式紙食器に対する引き合いと分かった。A社は、日本の大手ハイテク企業と組んで、昨年の7月に会津若松に工場を構えたばかりであることと、2001年から連続して3年間、米国連邦政府の環境庁から、Waste Wise Program Championという特別表彰を受賞していることがインターネットで検索してみて判明した。

リサイクル可能な紙容器

 早速S社に連絡を入れて、オファーするべく、A社の使用意図と会社概要を説明し始めた。しかし、ABIC派遣のコーディネーターの誰しもが、空気を運ぶような箱型の紙食器のこと、米国までの輸送費その他を考え合わせると、とても成約に至らないと最初は頭に思い浮かべた。後から教えていただいて分かったことだが、S社の社長は、この道40年の酸いも甘いも自分自身で人一倍体験した方であった。開口一番、「よくぞ、はるばる地球の裏という遠方からアクセスしてくれた」と想像だにしていなかった引き合いに大感激。

 「箱屋は、受注産業。中身ではないので、いずれは捨てられるものを作り続けるしかない。しかし、東大阪市の製品が違うのは、“分別すれば、紙はまた、紙にリサイクルできる”という信念を持って取り組んでいる。わが社の箱には、“心”が入っている。二重構造だから分別できるので、最後に燃やしても公害にならない。世の中では資源は有限と言われながら、目先の便利さと単価や形にとらわれて、発泡スチロールやプラスチック製がどんどん作られている。揚げ句の果てに埋め立て廃棄にも困り、また焼却処分を余儀なくされてダイオキシン発生などの公害に悩まされている。しかし、この壊れかかった自然も強い意志をもってひとつずつ継続して努力すれば、必ず元に戻せる」。

 「焦らなくてもコスト優先でなく、環境重視を優先している所も必ずある。ファースト・フードは、余裕のない人や食品素材に無関心の人たちが行く所。世の中に認知されるまで、アンテナを高くして発信し続け、営業を展開する」という熱い思いを、延々と中ジョッキ一杯のビールを飲みながら、深夜まで約5時間の講義を拝聴した。またS社をモデルとした「路上生活からの旅立ち」という感動のドキュメンタリー小説も貸してもらって、2時間で一気に読み終えた。

 社長から、詳しい商品説明、開発の経緯、ライフサイクルアセスメント、これまでの売込の展開状況、環境問題に熱心な学生NPO「ロドリゲス」との出会い、地域のお祭りの運営幹事との運命的な話に感動して無償提供したこと、お祭り期間中に社長夫婦が回収ボックスを直接持参した分別回収の効用説明等々、思いのたけを聞かせてもらうと同時に、生産工場を見学させてもらった。特にW大学キャンパス内の身近な環境対策に熱心な学生や大阪のお祭りの実行委員会の幹事の方々が、生協食堂や、お祭りの後で発生しているゴミの対策に真剣に取り組んでおられることを知り、御縁が始まった経緯を伺った。学生NPOは、「環境ビジネスは本当に採算に合わないのか」と会合の都度、回収再生ビジネス起業化のための調査資料とともに、真剣に具体策を検討してくれているという。

事業所の環境対策

 A社は、製品そのものの資源リサイクルを検討すると同時に、社員食堂のゴミの減量とリサイクルの検討にも取り組んでいる一環だという。社員の環境に対する意識の定着を狙って、会社から刺激的な優遇策も考えているという。また同社での環境に対する積極的な取り組みが、社員の各家庭にも連鎖反応することを念頭に、非常に熱心に検討している中で、インターネットの検索エンジンに何度も繰り返しアクセスし、ようやくのことで東大阪のS社のホームページにたどり着いたという裏話も聞いた。

 当初は、会津若松の合弁工場へ説明に行ってくれれば十分、その報告を待って判断したいとの表現であった。S社の社長とも相談して、やはり「最初に苦労してアクセスしてくれた当人に直接会いたい」と申し入れて、了解を取得。A社の担当からは、「ホームページにアクセスしただけで、日本から米国まで出かけるのは、よくあることか」との質問まであった。とんでもない、これは疑問を持たれたとおり、超異例のことであると背景を説明した。

米国での商品説明会

 S社の社長から何日にもわたって繰り返しいろいろな説明を聞き出して、また工場の操業の実際をデジカメで撮影し、合計78コマのプレゼン資料を作り上げた。同時に、A社に無理を承知のうえで近隣の官庁や大学と同業他社に対し、日本からプレゼンのために出張させてもらうとの広報をお願いした。

 結果として、6月初めに世界的に錚々そうそうたるハイテク企業、州立大学、官庁の関係者18名に対しプレゼンの機会を得ることができた。現物見本を持ち込み、実際に耐熱性、加熱性、保温性とともに、電子レンジにも使えることや、汁漏れしないことを実演し理解してもらうことができた。帰国の翌週には、当のA社から「非常に成功だった」とのメールが入電、参加してくれた各社と電子メール会議を継続して、7月末までに各社がそれぞれ、どのようにしたいかという具体的申し入れを必ずすることとなった。

 また6月8日付日本経済新聞朝刊の近畿経済版にも、商社OBを活かした産官の新しい取り組みとの紹介記事を掲載してもらい、S社のアンテナを高くすることに貢献できた。東大阪市経済部長からは、これを契機に、この種の活動に対する国の助成を働きかけるとの後日談が披露された。ロンドン、スペイン、ニューヨーク、ケイマン諸島、デンマークのレストランからもアクセスが入ってきており、環境を大切にするという関心の高まりと、それに関与させていただく責任を感じている。

 物事は、より正常な方向へ、より自然な方向へと動くという信念が多くの人の共感を呼び込んでいくことを実感し、より一層お役に立てればと念願している次第。皆様の御指導とご協力をぜひよろしくお願いします。

Copyright (C) 2003-2008, 国際社会貢献センター (ABIC)