マンスリー・レポート No.51 (2005年3月)
活動会員のレポート
  領事シニアボランティアについて
  在フランス日本国大使館
領事シニアボランティア 領事相談員
占部うらべ 重行しげゆき(元 トーメン)
事務所での筆者

 商社マンとして主にアフリカ向けの輸出ビジネスを担当していた私は、長いアフリカ駐在から帰国した2003年、定年を前に会社を早期退職し、現在は在フランス日本国大使館で、領事シニアボランティアの領事相談員として勤務しています。
まだこの耳慣れない領事シニアボランティアとはどんなものなのか、ご存知でない方も多いのではないかと思い少し述べてみることにします。
ABIC Information Letterに、JICAのシニア海外ボランティア活動報告が掲載されていますが、領事シニアボランティアはその外務省版とも言えるかもしれません。しかし、仕事の中身は当然ながらだいぶ違っています。

領事シニアボランティアは、外務省改革の一環として在外公館の窓口・領事業務を向上させるために、海外で実務経験のある中高年の民間人を、在留邦人の多い国の公館に派遣している制度です。領事シニアボランティアが配置されている都市は、上海、香港、ソウル、マニラ、バンコック、シドニー、ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンとパリの10ヵ所の在外公館(大使館・総領事館)になります。とかく「不親切」「対応が冷たい」と不評が根強い大使館の窓口・領事事務の改革・イメージ一新がその目指すところです。
2003年に創設されたこの制度に、公募で60代を中心に中高年581人の応募があったそうです。選考試験を経て、男性9名と女性1名 (44歳~66歳)が採用され、先に述べた世界10ヵ所の在外公館に10名が赴任しました。

大使館(外務省)の仕事は、外交、政治、経済など国民と接することの少ない業務が多く、何をしているのか理解されにくい面があります。しかし領事業務は、ほとんどが海外在留邦人や日本人旅行者と日々の接触を通して行われるだけに、国民の大使館(外務省)への評価は領事業務を以って決まるとも言われる程です。国民とともに歩む外交をめざすには、国民との接点の大きな領事業務がいかに大事であるかが指摘される所以です。
海外にいる国民の安全を守り、保護し、利益を増進するための海外での行政サービスになりますが、領事業務と言っても実に幅が広く、出生の届け出から、結婚・離婚届け、死亡届けまでおよそ人生の万般に係わりがあります。
その他、旅券、戸籍・国籍、査証、各種書類の証明、援護・支援、日本人学校、在留届け、一般相談事項(医療生活事情、教育事情、人生相談等)から在外選挙の登録・投票に至るまで、まさに日本人の冠婚葬祭(いわゆる、ゆりかごから墓場まで)に携わります。

海外で暮らすとなると心配事や苦労は避けて通れません。言葉の問題、生活習慣の違いから起こるトラブルや不安、悩みは日本以上に厳しいものです。大使館は日本人が海外で危険な目に遭ったり、問題があるときに相談を受け、必要であれば保護、援護します。
トラブルに巻き込まれた人や、悩みがある人から話を親身になって聞き、問題解決のきっかけやヒントを考え、元気づけ励ましのアドバイスを行うのは相談員の役目。問題を共有し、同じ立場で一緒に問題の解決に努める。国民感情に疎くなっていた外務省のお役人意識に、民間の普通の感覚と目線で在留者や旅行者に接し、応対する気軽な相談相手を目指しています。この健全な常識の意識改革と実践が、国民に顔が向いたサービスとして現在外務省改革に求められているのだろうと受け止めています。

これまでの企業人生、海外体験が領事相談を通して社会に還元でき、少しは人のためになると思えば商社に身を置いていた者としてやり甲斐のあることです。その意味で領事シニアボランティアはABICの活動に通じる社会貢献だろうと思います。
シニアの世代になり自分の人生を語り、価値観を次の世代に伝え引き継ぐ事は意義あることです。シニアのアドバイスが生き方のヒントを与え、問題を抱えている人に、立ち直るきっかけを与えるかもしれません。ボランティア活動は社会への恩返しにもなるのです。
世の中の役に立ち、人から感謝されるボランティア活動は、シニア世代の社会貢献の場でもあります。領事相談員をしていて、謙虚に人の話を聞き、誠実に接する事の大切さなど、まだ学び教えられることが多くあることを実感する毎日です。
人生のベテランである我々シニア世代、まだまだ元気に頑張りましょう。シニアの活躍に期待しエールを!

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