マンスリー・レポート No.61 (2006年1月)
活動会員のレポート
  オーストリア金型メーカーの訪日アテンド記
    岡宮おかみや ひろし(元 三井物産)

 昨年11月、ABICの大道コーディネーターから、オーストリアの金型メーカーの独語通訳のお話があり、自動車車体製造設備(工作機械、プレス、金型等)は現役当時経験した分野なのでなじみもあり、即座にお受けした。

 オーストリア大使館での事前打ち合わせでは、正・副商務参事官と実務担当の邦人スタッフから、旅程表につき説明があった。特殊な金型を日本自動車メーカーおよび関連会社の海外進出先へ売り込みたいとのことで、6日間で北は宇都宮から南は広島まで15社を回る強行軍であった。昭和40年代に課長代理か平社員のころ経験していたようなアテンドだが、私自身はこんな過密スケジュールを立てたことはなかった。定年後10年の体がもつか不安はあったが、乗りかかった船で挑戦してみることにした。

 11月末、オーストリア人2名が来日して再度詳細説明があった。日本では全く実績がなく無名だが、高抗張力(引っ張り強さ)特殊鋼板用金型に独特の技術を持ち、いわゆるニッチ狙いで需要を開拓したいと言う。プレス金型では製品に発生するしわや裂け目をいかに防ぐかが肝要だが、特にこのような材料を冷間(経費・エネルギー節約のため加熱せずに)成型するには長年蓄積された技術と経験が必要とのことである。製品としては、自動車の外板に覆われた各種構造部材(例えばドアの内部に組み付けられた横からの衝突に備えた棒状部材)があり、成型が難しい形状のものが多いとのことであった。話は理解できたが、経験上、日本の自動車業界に新しい生産設備を売り込むのは容易でなく、今ごろやって来て果たして相手にされるのか不安であった。

 しかし、実際に回ってみると、技術に対する評価は高く、質問は極めて熱心であった。ところが価格レベルについての手を替え品を替えての質問には、なぜかかたくなに「競争力はある」と繰り返すのみで失望した。もし私が担当者の立場だったら話が先につながる対応をするよう説得するところだったが、抑えて通訳に徹した。結局「ニーズがあったら連絡する」という先がほとんどだったが、1社だけ具体的引き合いを出すという企業があったのは収穫だった。日本の金型メーカーは自動車産業の好況で現在満腹という好機を逃さぬよう切望する。

 ところで、ある会社で通訳がなぜ専門用語に詳しいのか聞かれたが、現役当時の職歴を説明し納得された。

 なお、言語については、オーストリア人は英語もでき、海外生産との関連で訪問先に英語の分かる人もおり、状況に応じ、英語、独語を併用した。

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