マンスリー・レポート No.63 (2006年3月)
日本の学校に入学してくる外国籍の小・中学生への日本語指導
多摩市の小学校にて
右から 花井講師、フィリピン女子児童、藤村コーディネーター

 ABICの小・中・高校向け講師派遣グループでは日本人の児童・生徒向け「国際理解教育」に講師を派遣する以外に、日本の学校に転入学してくる外国籍の小・中学生に「授業についていけるように」「学校生活に馴染むように」日本語の教育と適応教育の講師派遣を行っており、大変効果を挙げていることをご紹介します。

 東京の周辺地域は都内より外国人家族の居住人口が多く、「日本語指導のニーズ」も高い。東京都多摩市より2003年度より依頼を受け、3年間で23件、28人の外国籍小・中学生の指導を行いました。毎週1回2時間の個別指導を約6ヵ月間継続します。

 親が長期在日の場合、子供を日本の学校に入れたいと思っても、「言語」の問題と「習慣・制度」の違いは大きく、友達が出来ない、学校に行きたくないなど、私たち商社駐在員時代の子女教育の裏返しです。先生は一人の外国人生徒の指導に掛かりきりはできず、元教員とか地域のボランティアで臨床的に対応されているケースが多いのですが、何分相手の言語が判らないでは親に連絡事項や指導方針を伝えることさえ困難です。

 そこでABICの出番となりますが、今までにABICが指導を受け持ったのは、中国語(北京・ウイグル・台湾)、タガログ語(フィリピン)、ハングル語(韓国)、ロシア語(ロシア)圏の子供達で、英語ができる子供は極めて少数です。一方、元商社マンは海外駐在経験豊富で、英語のみならず現地語練達の士も多く、また現地事情だけでなく現地の人の気質を理解している人が多いのでまず子供の心を打ち解けさせることができます。それが言語の指導のみでなく、本人・保護者の教育方針上の色々な相談に乗ることに大変役立っているのです。

 中学生になると高校受験が控え、保護者も本人も悩みますが、ABIC講師の指導で都立高校に合格したケースも生まれました。それはひとえに地方自治体が予算をとりABICを起用する施策を取ったお蔭で実現したわけで、親も本人も自治体も、そして講師も大変喜んだ意義深い成果でした。

 今年度半年間受け持ったABIC会員の教育実施報告の概要を現場報告の一例として以下にご紹介します。

講 師 出口 孝嗣(元住友商事)
『日本語・適応』教育実施終了報告
対象者 多摩市立某中学1年生(男子)
フィリピン国籍
教育期間 2005年6月〜12月(6ヵ月)計23回
  • 来日直後で日本にまだ不案内の生徒に対する特別な指導を行うこの施策は、極めて貴重かつ有意義であると感じた。
  • 個別指導であるので、本人の資質を見て能力等を引き出せる絶好の機会であると考える。
    但し、その効果は本人の意欲と環境(特に家庭環境)に大きく左右されると言える。この生徒は、家庭で家事手伝いをしているため(フィリピンでは一般的に子供が親の手伝いをするのはごく普通)学習時間が限定され、宿題を出してもできてこないことがほとんどで、日本語を特別に学習する時間は小生の週1回のみ。従い指導進度は遅々としたものになった。
  • 但し、この時間を通して日本における学習のあり方及び方向性が少しでも本人と親に伝わったと信じる。本人に欲が出てくればその方向に進んでくれるものと確信する。
  • また、本人への意欲を持たせる一環として、英語は同級生に比べはるかにレベルが高いので、特に試験対策にアドバイスを行った結果、英語の成績だけは満足できる結果を得られた。

(国際理解教育講師派遣コーディネーター 藤村ふじむら のぼる

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