マンスリー・レポート No.73 (2007年1月)
  泰日工業大学の開学―ABICとの関連について
  前ABICメコンデスク担当コーディネーター
(日タイ・ビジネスフォーラム副会長)
吉川きっかわ 和夫かずお

 2007年6月、タイに泰日工業大学(TNI:Thai-Nichi Institute of Technology)が開学する。名前が示すとおり日本との関係が深い。設立の目的および背景より判断し、真に意義ある大学と受け止め、日本側は官民挙げて支援のムードが高まっている。ABICとて例外でなく、今後の進展如何では関係が深まるだろう。背景をまず説明したい。

設立の背景・経緯

 海外技術者研修協会(AOTS)は1959年に設立されて以来、海外より多くの研修生を受け入れ、技術研修に多大な貢献をしてきた。それに並行してアジア学生文化協会が留学生の勉学に側面協力をしていた。両組織の理事長であった穂積五一氏は、時代の変化を察知し、先取りする形で留学生、研修生の多かったタイに斬新な理念の下、人材育成の機関の設立を計画した。

 1973年、バンコクに泰日経済技術振興協会(TPA)が設立され、同時に日本側に国庫補助や民間資金を受けるための窓口であり、TPAのカウンターパートとしての(社)日・タイ経済協力協会(JTECS)が設立された。TPAは、日本から金は出すが、日本人や日本企業のためのものではなく、すべてタイ側の自主性を尊重し、運営もすべてタイ人によって行うものとした。日本への留学・研修経験者が中心となり、熱意ある運営は大いなる成功を見た。80年代半ばまでほぼ100%であった日本の補助金事業は現在総事業費8.6億円のうち10%以下となり、ほとんどがタイ側の独自の事業となっている。技術・経営、日本語・タイ語の研修コースは年間合計2,400コースを数える。

 2003年、TPAは設立後30年経過し、念願であった技術系大学設立の構想を実行に移すことを決定した。目下開学に向けての準備が着々と進んでいる。

エンジニア教育をめざす

 大学建設用地はすでに保有し、長年にわたり蓄えた資金で建物も建設中である。開学の理念は昨今のタイ産業界全体の抱える問題点、すなわち優秀な技術人材の不足を解消するためのエンジニア教育の充実である。

 設置する学部は、工学部、情報学部、経営管理学部で、2007年の初年度は3学部合わせて450名の学生を受け入れるが、順次増え、第4年度より定員1,100名の新入生が入学する。高度の理論追求ではなく、産学協同で学際面に重点を置き、日本語教育にも力を入れるという。現在、タイでは日本の自動車産業の集積が進んでおり、工学部では自動車関連工学に重点を置いたカリキュラムを作成している。

 このようにして開学する同大学は過去の経緯より、主として日本からの技術移転を念頭に計画を進めている。2005年、2006年の2回にわたり幹部が来日し、各関係先を訪問のうえ、種々協力を依頼した。2005年にはTPA会長以下5名が、2006年には設立委員会委員長がABICおよびJTBF(ABICに事務所を置く日タイビジネスフォーラム)に来訪され、ノウハウ提供等の協力要請があった。

 TPAのカウンターパートであるJTECSは内部にTNI支援委員会を設けた。委員には東京大学、京都大学、東京工業大学など16の大学より主として工学部系の教授、トヨタ自動車、本田技研工業等の民間企業9名、メディア2名、政府機関9名で、民間団体は日本経済団体連合会とABIC/JTBFである。ABIC/JTBFからは私が選任された。

評価されたABIC/JTBFの活動

 民間団体からなぜABIC/JTBFが選ばれたのかにつき、若干述べたい。

 AOTSは毎年海外より研修生を日本に招き、研修の機会を与えている。最近は技術者以外にも中小企業経営者を招聘し、マーケティング論のセミナーを開催している。タイやベトナム関係のマーケティング論セミナーを6回にわたりABICのメコンデスクが一括受託し、それぞれ7、8名の講師を派遣、また、他のセミナーでも部分的に数回にわたり、数名の講師を派遣した実績が評価を受け、ひいては兄弟関係のJTECSにも認識されたためである。

 AOTSのセミナーにはABIC活動会員の諸氏に絶大なご協力をいただいたこと、またABIC会員では賄い切れない分野にはJTBF会員(総勢60名だが各業種を網羅し、全員がその道のエキスパートである)の協力を得て努力したことが背景にある。

 まだJTECSの支援委員会は具体的活動を開始していない。TPA幹部は自立心旺盛であり、自分達でできることは他人に依存しないゆえ、依頼があるのは少し先のことかと思われる。

 TPAは日本のODA資金供与先としてスタートしたが、いつまでもODAに依存せず、自立して望ましい方向に進んでいる組織として各方面の注目を浴びている。今後とも要請があった場合、ABIC会員のご協力をお願いしたい。

Copyright (C) 2003-, 国際社会貢献センター (ABIC)