マンスリー・レポート No.84 (2007年12月)
 

園田学園女子大学シニア専修コースでの講座、3年目を迎えて

 ABICでは、2005年度から園田学園女子大学の生涯学習センター「シニア専修コース」授業科目の一つである「比較生活文化研究」講座を担当してきた。
 この講座の狙いは“世界の人々の暮らし、文化、価値観等について、我々ABIC会員がオムニバス方式でそれぞれの駐在経験をベースに講義し、改めて日本社会や日本人の価値観や生き方を考える”ことにあり、24講座を3年間好評裏に続けている。
 本年度より上記に加え、下記3講座が新設され、ABICが担当することとなった。
1. 「現代世界の諸問題―地球環境問題」(前期13講座)
2. 「現代世界の諸問題―世界を揺るがす主要国・資源」(後期12講座)
3. 兵庫県立武庫荘総合高等学校・園田学園女子大学 高大連携プロジェクトの内5講座(8月上旬の夏休み期間)
 上記1.は高田さんが、2.は「BRICSと資源問題」を中心として石油、食料、水問題等を12名の会員がオムニバス方式で受け持った。また3.については下記5講座を4名が各自2日間に分けて180分担当した。
(1) 自然・環境問題と科学技術との関り
(2) 食品表示について学ぶ「消費期限」「賞味期限」
(3) お金と経済
(4) 国際人とは
(5) 海外とのビジネス。
 以下は、高田講師と徳田講師の感想である。
(赤田 堅 関西デスクコーディネーター 元 丸紅)

新設の「環境講座」で講義●学外見学の概要

高田 たかだ ひろむ (元 三井物産)

 園田学園女子大学シニア専修コースに、今年からABIC担当の「環境講座」が新設された。タイトルは「現在世界の諸問題(T)地球的視野から見た環境問題」と決まり、本年前期4〜8月の間で合計13回(講義10回・学外見学3回)、地球史の中での人類の位置付けから始め、環境関連の近代世界史・国際関係、温暖化を始めとする個別環境問題、身近な環境問題などを網羅して、総合的に環境を考える構成とした。
 なお余談だが、同大学はテニス部も有名で伊達公子などを輩出している。
 紙面の都合もあり、その中の学外見学の概要を記述したい。

1. 大阪市舞洲ゴミ処理工場(ゴミ焼却・破砕工場)
 この工場の最大の特徴は、オーストリアのフンデルトヴァッサー氏による工場外観を含めた設計である。過去のゴミ焼却工場の概念を打ち破り、まるでおとぎ話に出てくる夢の国のようなデザインの工場となっている。当然のことながら、子供の見学も想定しており、随所にそのための展示・説明がなされている。正に「百聞は一見に如かず」、大阪訪問時には見学をお勧めしたい。JR大阪駅から桜島線「桜島駅」、シャトルバス約15分「環境局前」下車。

2. 滋賀県高島市地下湧水活用の風土
 高島市は滋賀県・琵琶湖西岸の比良山系の麓に位置する。同市針江地区の地下には安曇川の伏流水が豊富に流れており、約20m掘削すればきれいな水が湧き出し、各家庭に“カバタ”(川端)と呼ばれる水汲み場がある。千年以上もの昔から上水道として利用されている。周りの水郷の景色と相俟って、春夏秋冬それぞれ特色があり、えもいわれぬ風景・風情を醸し出す。最近ではNHK TVでの放映の影響もあり、全国からの見学者が引きも切らない。最寄り駅はJR湖西線「新旭駅」、徒歩15分ほど。(添付写真参照)

 3. 松下電器エコテクノロジーセンター家電廃棄物回収・処理工場
 家電リサイクル法に基づく、TV・冷蔵庫・洗濯機・エアコンの廃棄物回収・処理工場。このところの回収非鉄金属の価格高騰もあり、最近では採算も向上している模様。我々の使用済み家電4機器の廃棄物処理で見事に回収処理され、事業化されていることに感心させられる。金属類やプラスチックなどが再生原材料として活かされ、新製品に生まれ変わっている。法的措置も絡むが、今後はその他の電気機器への対象拡大を期待したい。所在地は兵庫県加東市。大阪駅から西日本JRバス「竜野社」下車、タクシー約15分。
 この環境講座には我々と同年代のシニア合計16名(男性9名、女性7名)が参加し、毎回熱心に聴講・見学してくれた。私から聴講生に特に強調したのは「着眼大局、着手小局」、即ち環境問題は「世界的規模で考え、身近で行動して欲しい」ということである。各聴講生のサークル活動仲間やお孫さん達に、この講座で学んだことを折に触れて判りやすく話して、環境意識を広げるように行動して欲しいと希望した次第。また学外見学が好評だったことを踏まえ、来年も本講座が継続される場合は、見学訪問先を増やす事も検討課題である。
 なお上記見学先はいずれも予約が必要、連絡先は各ホームページに記載されている。

シニア専修コース講座講師体験記

徳田 とくだ 浩次 こうじ (元 丸紅)

 9月28日に園田学園女子大学シニア専修コース授業に講師として派遣された。授業科目は「現代世界の諸問題(世界を揺るがす諸要素)」ということで、私は「原油価格の歴史と石油市場の変遷」と題して、米国で石油産業が起こったと言われる1860年頃から約110年の間、ほとんどの期間1バーレル当たり1〜3ドルだった原油価格が、第一次石油危機(1973年)を契機として上昇に転じ、最近の約80ドルを超えるレベルまで暴騰した原因は何なのか、またその背景にある石油市場はどのようなものだったのかについて話をした。

 講義は私にとって初めての経験であったので少し不安はあったが、園田学園女子大学生涯学習センターの松成部長から丁寧な説明を受け、また取り上げるテーマについては自由に選ばせていただいたので、昔現役だった頃の出来事を含め、時系列に沿って歴史をたどる準備作業は楽しいものであった。
 当日、20数名の受講生たちは私とほとんど同年齢と思われ、テーマについても私より深い知識をお持ちの方もおられたかとも思うが、熱心に聞いていただいたことを感謝する。90分という時間は長いようで短く、項目ごとの時間の配分に苦心したが、特に実地の体験談には時間をとられがちで、予定していた項目の一部をご紹介できなかったのは残念であった。
 それにしても講義の行われた9月に入ってから、原油需給の国際的ファンダメンタルズには何の変化も見られないのに、原油先物価格が歴史的高値を何度も更新したのには驚いた。
 巨額の投機資金が先物市場に流れ込んで相場全体を押し上げ、「石油市場のカジノ化」と言われる昨今、例えば株式投資だったら直接利害を受ける人は投資家で、株をやらない人にはまず影響はない。しかし、原油という公共性の強い商品では、石油の実需には一切関係がなく、ただ電子端末を凝視しながら、ひたすら投資リターンを追求するトレーダー達の先物市場での取引で決まる原油価格の後ろに、何千万人、何億人という消費者の実生活が繋がっていると思うと、それは紛れもない現実であると知りながらも、旧オイルマンのはしくれの一人として、私は何ともやりきれない思いがする。

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