マンスリー・レポート No.85 (2008年1月)
活動会員のレポート
  21世紀最初の独立国 東ティモール紹介
    星野ほしの 和俊かずとし(元 東京銀行)

 2007年1月から2008年1月まで、私はJICAより東ティモール大統領府財政・金融アドバイザーとして派遣された。以下に東ティモールの概略をご紹介する。

東ティモールのプロフィール
日本人の海外旅行の人気スポットにバリ島がある。成田を午後4時に出発した便は7時間半の飛行後、夜半に南緯9度の常夏の島、バリ島デンパサール空港に到着する。翌朝の便で約1時間半のほぼ真東への飛行を経て到着するのが、私の勤務地であった東ティモールの首都ディリである。国土面積は1万4千平米、日本の長野県とほぼ同じである。人口約100万人、国民総生産(GDP)約4億4千万ドル、国民1人当たりのGDP約440ドル、と世界最貧国の一つである。

グスマン首相と

政治の現状
政治体制は議院内閣制である。現在の第2次憲制内閣の実権はグスマン首相が率いるCNRT党が中心の連立与党が掌握し、国家元首である大統領は象徴的存在にとどまる。2002年より第1次憲制内閣を担ったのは前与党フレテリンで、その中核は1974、75年当時の青年独立運動家が握り、その盟主意識と一党独裁傾向が顕著であった。建国後5年経った後も、なんら充実・成長を見せることが無かったように見える立法・行政・司法は依然弱体のまま、特に裁判所、警察、軍は未だ形をなしていない。

2006年5月〜7月の政治・社会の混乱
2006年5月、当時のアルカティリ首相が待遇改善を求める594名の国内西部出身の兵士を解雇した。これに端を発する国内の混乱は、警察官10名を含む死者37名、住居が焼き討ち、強奪などにあい、追われて公園や教会の庭、空港近くの空き地などに国内難民として流入せざるを得なくなった国民数は、一時15万人に達した。これにより国内東西の複数種族間の攻撃・復讐の悪循環を招く混乱となり、02年以降徐々に退去していた国連平和維持軍の応援を再度仰がねばならないことになった。

大統領府
執務室にて

日本との関係
日本は最大の援助国の一つであり、自衛隊の施設部隊が2002年から2年間インフラ復旧に活躍した。自衛隊が引き揚げた後、現地政府に贈与された建設機器の維持管理・活用のための指導・道路管理プロジェクトをはじめ、稲作農家支援灌漑用水建設・技術指導プロジェクト、環境保護のための流域管理、港湾設備補修、浄水場建設、地方病院建設など数々のプロジェクトで援助事業を行なっている。
またNGOが中心となった当国最大の輸出産品コーヒー生産支援プロジェクト、医療支援、貧困者救済生活支援プロジェクトも見逃せない。また、ティモール海のバユー・ウンダン油田石油ガス掘削プロジェクトには、日本からもインペックス石油が参加しており、東ティモールの国民総生産押し上げ要因となり、財政上も大きな歳入源となっている。

1月3日の誕生日に集まってくれたJICA、
日本大使館の仲間たちと

大統領選挙と国民議会選挙
2007年5月9日の大統領選挙決戦投票でラモス・オルタ氏が国民の70%の支持を得て、第二代大統領に選ばれた。同氏は1996年に被占領時代の無抵抗独立運動の功績を認められ、ノーベル平和賞を受賞し、02年第一次内閣の外務大臣になるなど、東ティモール一番の国際通として有名である。
2007年6月30日、この国の今後5年の運命を握ると言える重要な国民議会選挙が行なわれた。前議会においては左翼的傾向が強いフレテリンが過半数を握り、アルカティリ首相の強権的な政治手法に問題があった。そこで政治からの引退の意向を示していたグスマン前大統領が急遽グスマン新党を作り、民主主義路線を堅持するべく立ち上がった。65名の国会議員を選ぶための総選挙結果ではフレテリンは過半数を大きく割り込んだが、第一党の地位は守った(21議席)。

新しい政治状況と東ティモールの将来見通し
オルタ新大統領は、2007年8月6日にグスマン前大統領の指導力の元に結集した第2位のグスマン新党、3位、4位の連立(議席数は37で過半数を超える)で政権を担うようグスマン氏に首相就任と組閣を要請し、エミリア・ピーレス経済企画大臣他の有能なテクノクラート中心の内閣が発足した。
新内閣は着実に、移行期予算(07年7月〜12月)、新年度予算(08年1月〜12月)の策定、国会承認などを行なっている。今後とも国父と仰がれるグスマン首相率いる新内閣が、地道な努力により治安回復、国民の貧困削減、インフラ整備などの国造りを着実に実行されるよう期待している。そのために日本の果たすべき役割も、大きいものがある。(2008年1月末筆)

【事務局注:本案件には、2003年12月以降ABIC活動会員の皆さんが3代続けて専門家として派遣されています。
初代/高岡淳二氏(元東京銀行)、2代目/畑宏幸氏(三井物産)、3代目/星野和俊氏(筆者)】(4月25日筆)

Copyright (C) 2003-2008, 国際社会貢献センター (ABIC)