マンスリー・レポート No.93 (2008年9月)
活動会員のレポート
  ブルガリアの貿易・投資促進アドバイザー (JICA短期専門家)の活動を振り返って
    山本 やまもと 啓二 けいじ (元 三井物産)

ブルガリア事情
 ブルガリアから帰国後、寄稿の機会を逸していたが、事務局から改めて依頼があり、少し前の話で恐縮ながら執筆させていただいた。
 2006年11月より5ヶ月間、私は国際協力機構(JICA)からブルガリア政府の経済・エネルギー省(ソフィア市)に派遣されて、「ブルガリアの貿易・投資の促進」のためのアドバイザーとして駐在した。同国への日系企業誘致、関係強化に関する情報収集・調査・助言が主な目的だった。

執務室にて筆者

 ブルガリアは、人口が約770万人、国土は日本の三分の一位である。首都ソフィアは、人口120万人で国内で最も多く、市内の車の多さにもビックリだ。交通はトラム(路面電車)、バス、トロリーバスが主な移動手段でどれも混雑がひどい。ブルガリアと言えば、ヨーグルトと大相撲の琴欧州くらいしか日本人には浮かんでこないが、ブルガリアから見ても、日本は東洋の果ての果てで、本当に遠い国である。特産のヨーグルトにはいろいろな種類があり、本当においしい。ミネラルウォーター、チーズ、アイスクリームもいいし、ローズ製品(香水、石鹸、ジュース)は世界一である。しかし、高速道路の開発は遅れているのが目立ち、港湾の整備も急ぐ必要があるようだ 。
 ブルガリアは、2007年1月1日より27番目の国としてEUに加盟したが、その日は夜遅くまで花火を打ち上げ、TVもこのことを大きく報じていた。ブルガリアの一人当たりのGDPがEUの33%と低く、労働力の流失を心配している。一方、法人税が10%であり、労働の質が高く、賃金も安いことで、EUからの投資の増大も期待される。世界第二の経済国である日本からの投資も大いに期待されている。司法制度の改善、食品の安全等への取り組みが注目されている時であり、EU各国も様子を見ている状態にある。今こそ日本企業が先んじて投資する時かも知れない。「衆人みな善をなさば、我独り悪を為せ。天下のことみなしかり」と坂本竜馬も名言を残している。

地中海の海の幸 
獲れた日売り切りのため氷さえ 使っていない
アルジェ西方60キロにあるローマ遺跡ティパサ

ブルガリアへの投資促進の期待
 ブルガリアは、東に黒海と西にアドリア海を結び、欧州とアジアの中間に位置するため、政治・経済の戦略的な位置にある。ロシアからの石油、天然ガスのEUへの中継貿易国として、益々その重要性が増している。投資環境としての魅力と利点は、バルカン地域ではナンバーワンと言えるだろう。首都ソフィアはギリシャ語で「知恵」と言う意味らしい。ブルガリア人の高い教養と知性は、国際数学コンクールでも優勝していることで証明されている。なお、話しが跳ぶがイエスが「ダ」で首を横に振り、ノーは「ネ」で首を縦に振るので、最初は面食らったものだ。
  1991年以降、市場経済への移行を目指し、2005年にはGDP実質成長率は5.6%、鉱工業生産成長率も確実に15%台に伸びて、マクロ経済としての生産性の増加が外国直接投資の増大に繋がっている。情報通信、電子部品、自動車部品、ペトロケミカル分野への投資が求められている。
  日本語を教える小中高一貫専門学校があり、日本への関心も高い。しかし、日本からの投資は、残念ながら過去14年間でわずか4,400万ドルで世界からの全投資額の0.3%に過ぎない。輸出入も2005年時点で30百万ドル強とまだまだ微々たるものである。日本企業では、風力発電の建設とワイヤーハーネスの製造に投資が始まったばかりである。 5ヶ月という短期間の滞在であったが、貿易と投資促進のため作成した小冊子『必携 ブルガリア投資ガイド入門』(JICA/ブルガリア経済・エネルギー省共同出版)が両国の経済発展に貢献できれば望外の喜びである。

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