星野 三喜夫 著
発行:パレード
- 発行:パレード
- ISBN:978-4-939061-28-8
- A5版240頁
- 定価:3800円(税別)
- 2010年6月1日発売
鳩山前首相は昨年9月の就任に際し「東アジア共同体」設立を国家目標に掲げたが、本書は、この地域の統合や共同体は民主主義や人権等の普遍的価値の擁護・追求と、政治・安全保障の問題が極めて重要との視点から、米国もこれに加わって、アジア太平洋を包摂するAPEC(アジア太平洋経済協力会議)をプラットフォームとして地域統合を構築するのが望ましい、と主張する。この地域で想定される統合体や共同体が仮に普遍的価値を犠牲にしたり、安全保障を蔑ろにするものであった場合、その「ツケ」を一番被るのは日本であると力説する。
この地域の統合や共同体の設立は情緒的な懐疑論に流れがちであるが、地域の多様性や差異ばかりに目を向けて、「東アジアでEUのような共同体なぞできる筈がない」と否定的に捉えるのは地域の実体を捉えておらず、合理的でないことは本書を一読すれば合点がいく。著者は、この地域にはこの地域流のまとまり方があって良いのであり、現在確実に進んでいるde facto(事実上)で機能的な経済協力や経済統合を、比較的早い段階で制度的枠組みに昇華させることは可能だと主張する。
本書は、この地域の統合の土台としてなぜAPECが相応しいかをAPECの適切性・親和性仮説と名付けて、これを実体面と理論面の両方から実証的に論考している。2010年の今年は日米安全保障条約締結50周年に当たり、また日本がAPEC議長国となり(11月の横浜会議)、さらにAPECの貿易・投資の自由化(ボゴール目標)の達成年という節目の年である。地域統合におけるAPECの適切性、親和性を議論する本書はその意味で極めてタイムリーである。東アジアの統合や共同体に興味と関心をお持ちの方にはぜひ一読をお薦めしたい良書である。
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