活動会員のレポート

再びインドで外交官として

任期付外務省職員(在外公館職員) 遠山とおやま あきら (元 丸紅)


草の根無償案件完成記念テープカット

 私は丸紅(株)に1977年から2000年まで在籍、その間、情報通信分野でODA案件を主に担当、そして1997年から2000年まで3年間インドのデリーに駐在した。
 任期付き外務省職員募集については、ABICからの連絡により知った次第で、募集要領の中に「ODA案件取組み経験者、在外公館勤務」という文字を見た瞬間、これだ!と思い、何の迷いもなく応募した。外交官になるというのは中学時代の夢だったからである。

 我が国の在外公館・代表部、外交官の数は主要国の中では一番少なく、今後質量ともに増強していく必要がある。その一環として、2008年度から、経協担当官を民間から採用するということで任期付き外務省職員(経協担当)の募集が始まった。
 現在までわずか4名のみの採用であるが、昨年は丸紅OBの杉浦勉氏がブルキナファソ大使となられ、今年は伊藤忠商事OBの丹羽宇一朗氏が中国大使となられたように、継続して商社OBが外交官として採用されていることは非常に喜ばしく思う。


草の根無償案件完成式典にて筆者(左)

 昨年4月1日入省後、研修を経て、4月末にムンバイ総領事館着任となったわけであるが、空港に着いてまず驚いたのは、10年前には空港出口にたむろしていて、さばくのに大変苦労したポーターや白タクが全くいなくなり、なんとも綺麗な空港に生まれ変わっていたことである。そして、昼間街を歩いても、当時歩道に溢れていた路上生活者がほとんどいなくなっていたことは大変な驚きであった。
 街並みも高層マンションが雨後の竹の子のように乱立し、この10年でのインドの経済成長を実感した。今住んでいるマンションも、ムンバイ市内にある36階建の高層マンションで、付設のプール、テニスコート、ジムなどが利用出来、この中にいる限りはインドにいることを忘れてしまうほどである。また、2014年には157階建という居住用建物としては世界最高層となるマンションが近くに建設される予定で、ムンバイのマンション建設は過熱する一途である。

 経協担当領事としての仕事は、主に草の根無償案件の形成、フォローである。これは、草の根外部委嘱員、現地スタッフと共に案件形成、事前調査、契約、完了視察、フォローアップなどを行うもので、ムンバイ総領事館では毎年数件の契約調印を行う。既に10件以上の完了視察を行ったが(夜行列車で10時間以上かけて現場に行ったり、最寄りの空港から車で4~5時間かけて行ったりで、移動が大変)、現場では毎回、被供与団体に加え、周辺の児童や村人が集まって大歓待してくれる。こうして、たくさんの善意にふれて帰って来ると心が洗われた思いがする。


次々に誕生する大型ショッピングモール

 この他にも、経済関係の出張者や各省大臣が来られた際の便宜供与があり、特に昨年末、鳩山総理夫妻がムンバイに来られた際は、周辺公館からも大勢の応援出張を得て何とか無事に全ての行事を終えたが、長い準備期間、当日の緊張感から開放されたためか、最後専用機が空港を離陸する時は、ほっとして思わず泣き出す女性職員もいたほどであった。

 着任以来どんな仕事であっても私にとっては新鮮で楽しく行えることに幸せを感じており、外務省、きっかけをいただいたABIC、ムンバイ総領事館の皆様には御礼を申し上げたい。