活動会員のレポート

東京国際交流館での「日本語広場」講師を終えて

遠藤 えんどう 眞喜子 まきこ (元 三井物産)

  2006年7月から4年半ほど講師として活動した東京国際交流館の「日本語広場」をご紹介いたします。 東京国際交流館は、独立行政法人日本学生支援機構に所属し、財団法人国際学生支援協会が運営しているお台場にある施設です。留学生や研究者の宿舎と「プラザ平成」という国際交流会議場などの施設があり、その中の日本語研修室で、居住する外国人留学生やその家族への学習および生活支援としての日本語教室をABICが担っており、「日本語広場」と呼んでいます。
 そこでは金曜日を除く月曜日から土曜日まで、初・中・上級クラス、それぞれ90分授業を何人かの講師が受け持っており、私が火曜日中級クラスを担当した間に、19ヵ国、65名の受講生との出会いがありました。その中には日本語能力検定試験1級に合格した人も少なくなく、母国に帰って日本語教師になったとか、東京で起業したとか、また日本で生まれたお子さんの成長した写真を添えたメール等々の近況報告を頂くことが、私にとって何より嬉しいことでした。


江戸東京博物館にて留学生と筆者(右)

 私はABICとは別に、いろいろな場所で日本語を教えて参りました。地域のボランティアを皮切りに、区立小中学校に在籍する外国人児童生徒への取り出し授業や都立定時制高校(外国人生徒の受け入れ場所となっているのが現状です)、いわゆる就学生の通う日本語学校、企業内日本語研修、そして昨年からはABICからの推薦を頂き、多摩大学で教えております。

 一般の日本語教室では、カリキュラムやシラバスで学習総時間数や学習到達目標などが決められていることが多いのですが、この「日本語広場」はいつでも誰でも参加でき、曜日ごとに講師が変わり、あえて一貫した指導、継続的な学習をしない仕組みをとっています。ですから1回きり、忘れたころに顔を出す、それぞれの受講生のレベルにばらつきがある、などというのは当然で、念入りに授業の準備をしたのに当日急遽変更せざるを得なくなった経験は、私以外の講師の方々も少なからずお持ちではないかと思います。しかしそのような中でも、居住期限の2年間、各曜日に熱心に通い続けた受講生も多く、彼らの旺盛な学習意欲と言語習得能力の高さには、さすが次世代を担う世界の優秀な人材の集団と感心させられました。

 ウィ-クデ-の午前中クラスとなると、約半数の受講生が留学生の配偶者でしたが、大学院生や研究者を夫にもつ奥様方もまた知的レベルが非常に高い上に、日本文化や日本事情へ深い関心をお持ちで、それに答えるべく常に受講生にとって有意義な時間となるよう心がけました。時には日本の食材をテーブルいっぱいに並べて楽しく会話をしたり、季節の和菓子を頂きながら実際にお抹茶をたててもらったり、各国のお料理を持ち寄ってパ-ティ-と化したこともありました。また教室を飛び出し、初夏には明治神宮菖蒲園に出かけ、秋には両国でちゃんこ鍋をつつき、江戸東京博物館で昔の東京を感じてもらう、などなど。

 この「日本語広場」でさまざまな活動や経験をさせて頂いたことに心から感謝申し上げるとともに、出会った多くの素晴らしい方々との交流を今後も大切に続けていきたいと思っております。私の趣味が国内外のフルマラソンを完走することを知っている元受講生たちから「先生、応援するから○○マラソンに来ない?」というお誘いをいつか実現したく、彼らとの再会を楽しみにしているこのごろです。


交流館日本語広場受講生宅の食事会での筆者(右端)