活動会員のレポート

多摩大学「通訳入門」講義の報告・感想

川本 かわもと 康博 やすひろ (元 丸紅)


2010年8月

2011年8月

 2009年4月末にABICから、多摩大学グローバルスタディーズ学部(以下SGS)で開講する「通訳入門」の担当非常勤講師応募の打診があった。私はたまたまその数年前から文化面を含む幅広い分野に通じた英語を身につけ直そうと、多くの時間を英語の勉強に充てていた。また浅いながらも日本の文化・歴史等も勉強していた。そんな折の話なので即刻応募し、ABICから適宜助言を頂戴して書類を整えた後、SGS松林学部長の面接を経て、ABIC会員の加藤保弥氏(元住友商事)と共に非常勤講師に任用された。

 加藤さんと私は早速、SGS2009年度秋学期の「通訳入門」講座30コマを夫々15コマずつ分担することになった(2010年度から年間60コマに倍増)。加藤さんの各種通訳理論・実践講座に加えて、私の講座は「ワークショップ日本」と名付け、日本文化の通訳能力を備えたグローバル人材を目指す「実践トレーニングの場」と位置付けた。
 外国人との交流においては、相手と自分双方の人格・文化をお互いにきちんと理解・尊重し合うことは肝要であり、そのための英語コミュニケーション能力と教養が要求される。即ち、それらの能力の基礎部分を養うための訓練を、本講座で行おうとの狙いである。

 カリキュラムは、主題の日本文化を14のテーマに分けて組み、教材は日本文化の基礎知識習得と英文音読に用いる指定教科書と共に私の手作りハンドアウト(HO)を使用する。HOはテーマ毎に外国人が疑問に思うことや興味を持ちそうな事柄(例えば、「何故日本人は家に上る時靴を脱ぐのか?」等々)を毎回10問程度のQ&A(英文の質問と解答例)に纏め、各授業の1週間前に学生にメールで配布する。

 多摩大学SGSはこじんまりしたキャンパスで、すれ違うと学生がニコニコ挨拶してくれるようなアットホームな雰囲気の学校である。受講者数は学期で異なるが10~20名規模であり、教室は賑やかで明るい。授業が始まると、学生はまず趣味など軽い話題の1分英語スピーチをした後、講師の私も参加するペアワーク(PW)とグループワーク(GW)に臨む。
 学生はHOの10問の中から予め選択した2問の解答について、PWとGWで披露する。この解答に対して相方や他メンバーがその場での思いつきを英語で質問し、それに対して更に返答する、という具合に対話を発展させていく。これは予期せぬ様々な質問にも瞬時に対応するための訓練だが、途中で雑談などに脱線することがあるものの結構盛り上がる。

 期末試験では、学生全員に5分程度の英語のプレゼンを課す。プレゼンターは原稿を手に持たず、聴衆に向かってアイコンタクトを絶やさずに語り掛けることを求められる。学生は皆しっかり準備をするので、実際のプレゼンは内容がユニークで、工夫を凝らしたものが多い。プレゼンを終えた学生の多くが達成感にも似た満足そうな表情を浮かべるのが印象的である。
 上の写真は2枚とも期末終了後に学生が自発的に撮影してくれたもので、どちらも笑顔が多く見られる。

 学生は皆真面目に授業に取り組んでくれて、口々に「楽しい授業だった」「英語を沢山話せてよかった」「日本人ながら日本の文化を英語で話す難しさを感じた」等々、色々な感想を話してくれた。私も彼らの生の反応を目にして遣り甲斐を感じつつ、授業の更なる改善に努めている。
 最後に、斯様にエキサイティングな機会を与えていただいたABICの皆さまに心から感謝申し上げる。