熟議グループ4
2011年11月中旬、ABICよりJEARN*(ジェイアーン・グローバルプロジェクト推進機構)が主催する国際教育フォーラムの案内があった。筆者自身、フランクフルト日本人国際学校で文科省の嘱託(国際交流ディレクター)として3年間、小・中学生の国際理解教育と現地校との交流という仕事に直接携わった経験があり、国際教育には日頃から深い関心があるため、参加することとした。その内容を以下報告したい。
開催日時:2011年11月26日(土)10:30~17:00
開催場所:内田洋行ユビキタス協創広場CANVAS(東京都中央区)
プログラム:
10:30-12:30 ・鈴木寛前文科省副大臣の挨拶
・生徒と教員による体験発表
・学校の国際教育への提言 熟議
12:40-13:40 ランチタイム
14:00-17:00 iEARN世界大会報告/JEARN2011年度活動紹介
プログラムの最大の山場は熟議であった。以下の通り5グループ(各6~8名)に分れ、それぞれ異なったテーマについて話し合われた。予定は昼食前までの2時間であったが、どのグループも議論が白熱し、とてもその時間内には収まらないため、昼食をとりながらランチタイムをフルに使って熟議が続けられることとなった。
グループ1 カリキュラムに国際教育を科目として加えることを可能にする
グループ2 ICT環境を使ってグローバルなオンライン協働学習を可能にする
グループ3 教員研修に国際教育を取り入れることを可能にする
グループ4 国際教育コーディネーター育成を可能にする
グループ5 グローバルな教育国際会議への教師・生徒の派遣と国際教育への予算化
紙面の制約があるので、全てのグループの討議内容について記すことはできないが、筆者がメンバーに加わったグループ4で出された意見、あるいは提案の主なもののみ記しておきたい。
- 国際教育コーディネーターは、学校と学校あるいは先生と先生の橋渡し役である。
- 従って、学校の特質なり内容を熟知している必要がある。
- また日本あるいは日本人についての深い知識を有するのはもちろん、パートナーとなるべき相手国の実情をもよく理解している必要がある。
- 具体的には、日本から海外の日本人学校に多くの教員が派遣されているので、それらの人材を活用することは一つのアイデアであろう。
- またJEARNは、世界の学校と先生方を繋ぐ太いパイプを持っているので、そのネットワークを活用するのも一案である。
- いずれにせよ、国際教育コーディネーターの育成には文科省のバックアップが不可欠である。
この様な議論の場が設けられたのは2010年が最初で、筆者が参加したのは2回目の場ということになる。まだ始まったばかりであるが、JEARNとしては、これから議論を深めていって、最終的には文科省に対する政策提言まで持っていきたいとのことである。
しかし、学校の教育現場では、多くの教師が現在の教育あるいは抱えている課題で手一杯状態であり、とても国際教育まで頭が回らないというのが現状のようであるし、文科省の方針においても国際教育にプライオリティーが与えられていないように思う。つまり、JEARNが目指すところと、現実の間には大きなギャップが存在すると思われ、それをいかに埋めていくのかが今後の大きな課題となろう。
*JEARN:世界最大の国際教育ネットワーク、iEARN(アイアーン)の日本センターとして、日本で初めての本格的な国際協働プロジェクトを推進する教育NPO