活動会員のレポート

文化庁日本語教育事業の「茨城県定住外国人日本語伸長教室」の開設

中南米担当コーディネーター、元 三井物産 もり 和重 かずしげ


下妻教室

常総教室

 2011年度文化庁の「生活者としての外国人」のための日本語教育事業「日本語教室の設置運営」に応募した結果、4月に「茨城県ブラジル人等定住外国人児童日本語伸長教室」の認可を受け、6月から11月にかけて実施している。
本事業実施の背景としては、既に本紙でも紹介しているが、リーマン・ショック後、親の失業などの結果、急増した不就学・不登校子女の救済のため、日本政府(文科省)が2009年度から3年間の緊急支援プロジェクト(予算37億円)として、これら子どもたちが日本の公立学校へ円滑に転入できるように日本語教育を中心とした「虹の架け橋教室」委託事業を公募した。
 ABICもこれに応募し、2009年9月に認可を受け、茨城県常総市・つくば市でブラジル人学校と提携し、2教室を運営しており、既に数名の生徒を公立学校に送り出すなど成果を上げている。
 しかし、本プロジェクトが本年12月で終了するため、本事業の重要性を鑑み、政府に対し予算継続の要請をしているが、3.11の大震災の膨大な復興予算の影響で継続は難しい見通しである。
 リーマン・ショックと3.11東日本大震災の影響で、2008年初頭には32万人に達した在日ブラジル人も現在22万に減少したと言われているが、定住化が進んでいる状況は変わりない。「虹の架け橋教室」を通して見えてきたことは、学齢期にある子どもたち(約2.5万人)が数年後には日本社会に参入するのは間違いなく、十分な教育と社会適応性を持たない人材の参入は地域社会にとり将来大きな社会リスクになることは予見できる。
 不就学・不登校の子どもたちの救済を目指す「虹の架け橋教室」に対応する日本語教育充実と社会適応教育機会の拡充により、心身共に健全な青少年を育て社会に送り出すことが地域社会にとり重要な課題であり、地方行政・地域社会・地域ブラジル人社会などと一体となり、多文化共有・共生の一環として協働して取り組むことが必要である。
具体的に挙げれば、①日本語教育の充実、②社会適応と進学指導、③職業教育(職育)、④学童健康診断、⑤母語教育対策などである。これらの事業については、既に地域の行政・地域社会と取り組みを始めている。その中の日本語教育の充実の一環として、文化庁の「生活者としての外国人」のための日本語教育事業を取り上げたものである。

「茨城県ブラジル人等定住外国人児童日本語伸長教室」事業:

1.茨城県のブラジル人の登録者数:
 茨城県の調査によれば、ブラジル人の登録者数は、1990年1,600人(県同全体12,300人)が、2006年には11,000人(同53,000人)と約7倍に急増し、その後2009年10,200人(同56,300人)と同水準を維持していたが、3.11後には地震・放射能への恐怖心から1割以上が減少していると推定されている。そのほとんどが県東南部の常総市、土浦市、神栖市、筑西市、下妻市周辺に住んでいる。義務教育年齢児童数は、約1,000人前後(10%)と推定され、 1/3公立学校、1/3がブラジル人学校(常総市2校、つくば市1校)に通学、1/3が不就学・不登校と言われている。
従って「虹の架け橋教室」もブラジル人の集住する常総市と下妻市(その後つくば市に移転)のブラジル人学校との連携により開設したものである。

2.日本語教育強化の重要性:
 日本で定住外国人の子どもたちが社会的に独立して生きていくための基盤として、日本語の習得は重要な要素である。茨城県内での官民による日本語指導活動は少なくないが、より高度な日本語学習を進めるには制約がある。例えは、上級校を目指すための公立学校への進学や転入・専門的な職業教育を目指すとか日本社会でより高度な生活を目指し日本語能力や生活力を高めたいと希望する子どもたちの期待に応える拠点として「日本語伸長教室」を設置した。
 設置場所は、「虹の架け橋教室」のある常総市内の茨城県就労・就学センター内を借用し、NPOコモンズと協働し、虹の教室の日本語教師を指導者の中心として開設した。今後、有能なボランティア、日本語指導員、ブラジル人学校、ブラジル人コミュニティ、地域NPO、地域商工会、市役所、市教育委員会・公立学校、県庁などの支援を受けて、本教室の充実と定着を図るべく取り組んでいる。これをモデルとして、日本語教室の充実と継続を図り、将来的には拠点となる教室を増やしていきたい。

3.「日本語伸長教室の概要」:
 初年度の課題としては、講座のカリキュラムの設定と指導内容の充実および地域連携の確立であった。現在の生徒数は14名で能力別にA・Bの2教室に分けて2名の教師により毎週水曜日午後2時間授業で12月まで継続予定である。
 その他の懸案プロジェクトについても既に茨城県国際課、常総市・つくば市の市役所、教育委員会、商工会、医師会、筑波大学、NPO・ボランティア団体などとの協働体制もできつつあり、徐々に実現化の方向に進むことを期待している。