活動会員のレポート

中国赴任前研修の講師を終えて

野地 のじ 哲臣 てつおみ (元 東洋インキ製造)


 2012年1月13日にパソナグローバル事業部主催による、「中国赴任前研修」の講師を務めたので、その雑感を記してみたい。
 この企画は同社が、独特の文化とビジネス慣習を持つ中国にスポットを当て、これから赴任する実務担当者、経営者に、システム的に研修サービスを行うという、新規プロジェックトとして立ち上げたもの。1月より毎月5回にわたる研修スケジュールが企画され、私は、ABIC活動会員として、その初回の講師であるための使命感もあり、緊張感をもって講義に臨んだ。
 実施に至るまで、パソナ社との面談、メール等による詳細な事前打ち合わせを通じ同社がいかにこのプロジェクトに力を入れているかが実感された。当日は、年明け早々ということと、赴任時期のピークからは外れていることもあり、受講者は7名に留まった。メーカー、商社からの赴任者であったが、私が想定していたよりもはるかに若手の受講者が多いのに多少驚いたことと、一方で嬉しかったのは、赴任者のみならず、中国市場を重要視している企業の本社人事担当の方が受講されていたことである。異文化において赴任者が能力を発揮できるためには本社人事部が異文化対応を理解し、適材を派遣することが必須だからである。

 私の担当は、中国赴任のための健康管理、異文化対応、危機管理に至るシステム的研修の中で「現地社員のマネージメント」に関する講義で、受け持ち時間は質疑応答含めて1時間半ゆえ、細大漏らさずカバーすることはできなかった。
 特に配慮した点は、「総花的にならないこと、それでいてポイントは押え、机上の講義ではなく、できるだけ受講者が現地で失敗しないように、実例をお話する」こととした。そこで、副題として、「中国ビジネス文化にマッチした、尊敬されるリーダーになるには」と題し、具体的には、赴任直後の“はじめの姿勢”が肝心であること、現地社員からダメ印を押されないための資質は何か、中国文化特有のメンツを大事にすることはどういうことか、“コネ文化”の利用の是非について、等実例を踏まえたものとした。
 日本からの幹部赴任者にとって最も共通した頭の痛い問題は、採用、昇給、解雇等の労務管理で、それゆえ採用時と解雇するときの要注意事項にも重点を置いた。途中で「現地人の就業態度でこういうときはあなたならどうする?」というような疑問も投げかけ、受講者にも臨場感を持ってもらうよう腐心した。残念ながら講義時間が短かったため、受講者から回答、意見を求めての双方向によるフリートーキングは実施できずに終了した。

 今回はパソナ社の新規プロジェクトでもあるので、担当のABIC西山コーディネーターも研修を傍聴された。2月、3月以降の研修スケジュールにはかなりの受講申し込みが見込まれているとのことゆえ、ABICにて、中国以外の諸外国向けでも、同社向けの海外赴任前研修分野での一層の貢献を期待している。