1月15日(日)、70ヵ国からの留学生や研究者とその家族1,000人近くが住む東京国際交流館では、留学生に日本の正月を体験してもらい、居住者同士や、退館したOB、地域住民との交流を深めるため、恒例の正月イベントが開催された。
居住する日本人学生が分担して、餅つき、書初め、凧作りを始め、独楽、ベーゴマ、羽子板、福笑い、双六、けん玉、だるま落とし、めんこなどで子供たちと遊び、中庭ステージでは和太鼓演奏、酒樽鏡割り、ジャグリング、琴演奏、駅伝など、盛り沢山の行事やパーフォーマンスで賑わい、ついた餅は雑煮、焼き餅、黄粉餅などで振る舞われた。
ABICは昨年同様書初め指導を依頼されたが、月例書道教室の川嶋則男講師お一人では多人数に対応しきれないので、ABIC会員に呼びかけて、書道師範や書道指導にご経験豊富の太田艶子、鈴木松子のお二人にもご参加いただいた。
用意した14席は常に満席近い盛況で、50名を超える留学生たちが書道を楽しみ、講師は4時間以上立ちっぱなしでお疲れは当然ながら、熱心な学生たちとの交流を楽しまれた。作品はすべて展示され、その中から、書初め大賞、ユニーク賞、ワイルド賞それぞれ3作品が中央ステージで表彰された。
講師からは次のような感想が寄せられた。
(留学生支援担当コーディネーター 田中 武夫 )
凧作り
中庭ステージで和太鼓演奏
書初めの表彰式
「書初め」の指導
川嶋 則男 (ABIC書道教室講師、元 日商岩井)
本年は縁起良い龍(辰)の年。その小正月の15日、交流館主催新年イベントの一つ、「書初め」の指導に臨んだ。大震災の余波を受け、留学生や研究者他が日本を離れ、居住者が相当に減ったため、「書初め」参加者も総人数としては昨年に比べ減少した。それでも、正午の開場と同時に友人同士のグループが着席すると、徐々に入り出し、昼食後のピーク時にはほぼ満席状態。その後も、入れ替り立ち替りの盛況ぶりであった。
私は、イタリア・スウェーデン・中国・ベトナム・タイ・ロシア・韓国・フィリピン・ガーナ・日本と計10ヵ国の参加者を指導した。基本の机に向かう姿勢と片方の手の置き方から始まり、筆を持ち添えて字を書く感覚と字形を学んでもらう。左利きには、私も左手で対応。そうして字が書き上がると、「オー!」とか「ウァー!」と、驚歡の声が出る。私が作品を両手で掲げ、周りに注目をしてもらうと拍手喝采。私と参加者が共に充足感を味わう瞬間であった。
私は、字を大きく、太く、勢いよく書く、そして楽しくを、指導のコンセプトにしているが、今年も参加者の中から、作品を両手で持って私との記念写真の申入れや月例書道教室申込み希望があった。
年明けの日経新聞に興味深い記事が載っていた。留学生が日本を選んだ最大の理由は、『勉強や研究の環境』が整っており、『文化への興味』を満たすコンテンツがあるからだと。
書道の本質は、心穏やか、悠々として焦らず、ゆったりとした気分。微力ながら書道文化の継承と発展に役立ちたいと思っている。
初めての在日留学生「新春書初めコンテスト」講師
太田 艶子 (元 住友商事)
1月15日(日)12:00~16:00、東京・お台場の東京国際交流館で留学生等を対象に、ABIC主催の『新春書き初めコンテスト』が行われました。私は、今回初めてこのコンテストでの書道講師を、他のお二人の方とともに務めさせていただきました。
日本の文化である“書”を外国人に教えるのは初めてで、どう教えれば理解してもらえるかが心配でした。が、生徒達は、筆の使い方を覚えると、用意したお手本を見ながら、楽しそうに取り組んでいました。参加者が多くて準備した手本が足りず、急遽コピーしたりするほどの大盛況ぶり! 『今年一年の目標としたい言葉の書き方を覚えたい』という生徒もかなりいらっしゃいました。自書を座右の銘として置いておきたいということなのでしょう。
作品は、教室の外のパネルに張り出され、「書初め大賞」、「ユニーク賞」、「ワイルド賞]の三つの入賞作品を選んで、表彰式が行われました。『こんな賞品をいただきました!』と嬉しそうに見せてくれた生徒。日本での生活で、この日は特に思い出の日になったに相違ありません。
私は長年書道を勉強してきて、今では「読売書法会会友」、「書道師範」になっています。これからも、書を通じ国際交流のためにいさかかでも貢献できればと思います。
楽しい時間を共有し、心地よい疲れを感じながら帰宅の途についた幸せな一日でした。末筆ながら、本コンテストの成功にご尽力されましたご関係者の皆様に、再度感謝申し上げます。
「書初め指導」に参加して
鈴木 松子 (ABIC日本語教師養成講座講師)
1月15日(日)の正月イベントの中で、初めて「書き初め指導」のお手伝いをし、とても楽しい半日を過ごさせて頂きありがとうございました。
私は三人のお手伝いをしました。私の書に対する「意連(筆は行きたいところにいく)」の重要性をもとに、筆の持ち方、字の意味を伝え、姿勢を正してゆったりと書いて欲しいというと、練習を重ねる毎に、真剣さが増し、どんどん良くなっていきました。書き上げて壁に貼り、一緒に写真を撮って満足そうに去って行く女性の後ろ姿を見て、今後も続けて欲しいなと思いました。また、三人のうち二人が「書き初め大賞」「ワイルド賞」に入賞し、広場での表彰式に臨み、賞品を持って、「ありがとう」といってくれた笑顔がとてもすてきで嬉しかったです。
アメリカに留学していた大学で、毎年インターナショナルフェスティバルが行われていて、日本ブースでは書道が人気で、常に長い列を為していたことを思い出します。子供達は特に興味を持ち、自分の名前を日本語(漢字)にして欲しいとの意見が多く、漢字の意味を考えながら伝えたものでした。沢山の書道具を持参して行ったので、数人に個人的に指導もしていました。
交流館の留学生の皆さんには、日本の歴史的文化「書の心」を楽しく学んでもらうべく、これまでの皆様方のご尽力に感謝申しあげ、今後もご指導のほどよろしくお願い致します。