活動会員のレポート

富山県 環日本海経済交流センターでの活動

富山県環日本海経済交流センター 海外販路開拓支援マネージャー 鹿野 かの けん (元 住友商事)


藤野文晤 環日本海経済交流センター長
(元 伊藤忠商事 常務取締役) (右)と

 私がABICの御紹介で(財)富山県新世紀産業機構、環日本海経済交流センターの海外販路開拓支援マネージャーに任用されたのは2011年4月であった。富山県在住、商社での貿易業務および海外駐在経験等が任用条件となっており、2009年11月に故郷の富山市に戻っていた私にはぴったりの仕事であり、更に週3日勤務というシフトなので無理をしないで余暇を自分の趣味に費やしている。

 元来、当センターでは「環日本海」の国々である中国、ロシア、韓国などを対象とした経済交流を目指してきているが、近年東南アジア諸国への工場進出を検討される富山の中小企業も増えてきており、それに伴う相談が増えることが見込まれるために、当センター内に「富山県海外販路開拓サポートデスク」が設けられ、私はそこで東南アジア関係の御相談に応じている。

 私は住友商事時代には鋼材貿易業務に就いており、中東3ヵ国(エジプト、サウジアラビア、イラン)、東南アジア2ヵ国(シンガポール、フィリピン)での駐在中も鋼材の貿易を主業務としていた。
 住友商事を退職後は縁があって、ベトナムのハノイ(タンロン工業団地)およびタイのチョンブリ(アマタナコーン工業団地)で会社登録から、工場建設、商業生産開始までの作業に取り組んだ。ベトナムの工場を立ち上げたのは2005年のことであり、タイの工場は2008年に立上げた。多くの苦労はしたものの、これらの経験が現在の海外販路開拓支援マネージャーとしての業務に非常に役立っている。

 現在の業務に就いてから1年間余りで80件を超える御相談を受け付けたが、その中で既に工場進出を決定済みあるいは進出済みの企業は、進出国としてはベトナム、タイ、フィリピン、台湾で合計7社になる。また、間もなく進出決定が見込まれる企業はいずれもタイ進出であるが2社ある。
 この1年間の円高の進行および内需の減退で、やや保守的な気質の富山の企業の方々もさすがに海外進出を検討しなければならない状況になっているものと思われる。

 この仕事をしていて本当に良かったと思うのは、以前相談にお見えになった人たちが海外の現地で工場の立上げ業務に元気に励んでいらっしゃる姿を見ることである。去年12月にベトナム、カンボジアに出張したが、富山の私の事務所で何回かお話をさせて頂いた方が慣れないベトナムのホーチミンで元気に働いていらっしゃるのを見て感激した。この人なら絶対大丈夫と思っていたが、予想が当たった。この方以外でも相談にお見えになった30~40歳代の働き盛りの人たちが進出決定済みあるいは建設中の現地工場に既に駐在されており、富山の企業の人材の底堅さを物語っているものと思う。

 ただ最近は、日系企業の進出ラッシュで工業団地の空きが激減していたり、インフレの進行で最低賃金が高騰している国が多くなっている。そのため進出場所として現在お勧めしているのはベトナム南部やカンボジアである。これらの地域では新規の工業団地がまだ建設中であり、また中小企業の立上げ時の資金負担軽減のためにレンタル工場もそれらの団地内で準備されている。また、ミャンマーは民主化が進展し、多重為替の一体化がこの4月に実現したことに加え、平均賃金がベトナムをはるかに下回るレベルと言われており、進出先の候補地として大変注目されているが、富山の企業の方にもこの流れに乗り遅れないようお勧めしたいと思っている。