活動会員のレポート

グローバル人材育成のための大学の取り組み

 ABICはすでに一橋大学をはじめ多くの大学から英語での講義の依頼を受け、全講義数の約20%近くは英語での講義となっている。英語での講義のテーマとしては日本型経営、日米の自動車産業の比較、日本のICT(情報通信産業)の国際競争力、日本の電子産業の将来(一橋大学)などがある。
 現在の大学の抱える大きな課題は、大学教育のグローバル化である。津田塾大学ではEU圏内やその他海外の大学との交流を深めるため、国際連携による教育の強化の取り組みを積極的に進めている。その一環として留学生と留学を希望する学生双方を対象に、英語による講義の充実が図られている。その1つ『グローバル化をめぐる諸問題についての英語によるインタラクティブな講義』プロジェクトの中で、今回はABIC会員が、現在の日本の経済界の中で大変ホットな話題の日本の電子産業の競争力について、韓国と比較しつつ講義したのでご紹介したい。

(大学講座グループ)


津田塾大学での英語による講義

新藤 しんどう 哲雄 てつお (元 三菱商事)


教壇の筆者

 ABICを通じた依頼により津田塾大学の学生に「日本と韓国の電子産業の比較」をテーマに英語で講義(2012年12月14日)を行った。
 最初の自己紹介では学歴、経歴を数枚の写真で用意した。講義内容は、4つの観点から準備した。
 第一には日韓の電子産業全体のバランスである。日本の家電企業は事業再構築中だが、産業向け・社会インフラ向け電子企業や電子部品企業は堅調だ。第二には歴史的観点である。韓国は戦後日本型モデルを追及したが、1997年の通貨危機以降は米国型モデルに転換した結果、光と影が存在する。第三はマーケティングで、韓国は英語のできる国際人材を養成して、世界の地域市場に対応しているが、日本は海外で出遅れている。韓国企業の成功事例では、米国でのTVの曲線デザイン、イスラム圏でのMecca phone(メッカ・フォン、一日5回の礼拝時にメッカの方向を示す磁石付き携帯電話)を紹介し、欧州でのブランド・マーケティングにも触れた。第四はイノベーションで、アナログからデジタルに移行して、製造が比較的容易になりコスト競争が激化したことだ。
 講義の後で、大学から「学生たちから先生の講義は大変好評でした」との連絡を受けて安堵した。「また新しい知識を増やすことができた」、「Mecca phoneなど、その国のニーズに応えた電子機器が興味深かった」、「日本はもっとグローバルな視点を持っていかなくてはならない」などの感想が学生から寄せられたのは心強く思う。オブザーバーとして参加したABICコーディネーター(サウジアラビア駐在経験者)には、Mecca phoneの説明時、イスラムのモスクから流れる礼拝の呼びかけ「アザーン」を実演してもらったことは実に効果的だった。