活動会員のレポート

フィリピン人技能実習生に日本語を教えて

  國近 くにちか 素子 もとこ (ABIC 会員)


屋外で 筆者(前列左端)

授業風景

 私はABIC主催の日本語教師養成講座の卒業生です。エコロジー促進事業共同組合が外国人技能実習生への集中日本語研修の女性講師を募集しているとの情報を得て、応募し採用されました。
 まず7月に富山県の国立立山青少年の家で6日間教え、今回8月は奈良県の国立曽爾(そに)青少年自然の家で6日間日本語講師をしました。曽爾村は最寄りの三重県名張市近鉄名張駅からタクシーで断崖絶壁の香落渓(こおちだに)を延々と、標高700メートルあまり登ったところにあります。斜面を一面にススキが覆い青い絨毯を広げたような爽快な草原です。夜は満天の星が降り注ぎます。
 エコロジー協同組合は過去7年にわたって多くの外国人実習生を日本に紹介しています。実習生は本国で1年間日本語を勉強したのち、試験と面接を受けて選ばれた優秀な若者たちです。入国したらすぐに青少年自然の家に入り、日本で生活し働くにあたって必要なことを1ヵ月間、学びます。専用テキストは各種書類記入の仕方に始まり、日本で健康で安全に暮らすためにとか、会社の期待に応えるためにとか、すぐにも必要な日本語が順序良く学べるようになっています。日本語学習のみならず消防署の職員による火災予防、警察官による交通安全や詐欺被害予防オリエンテーション、弁護士による法的保護の講話も受講したあと、1ヵ月後にそれぞれの企業に配属され、工場で3年間正社員として働きます。
 技能を学び、お金を貯めて、帰国後は親のために家を建てる、新しいビジネスを立ち上げる、大学に入って勉強するなど未来に希望がいっぱいなのでそれはよく勉強します。クイズ形式で単語の意味や言い回しに寸暇を惜しんで取り組みます。
 食事はブッフェスタイルなのでおいしいおいしいと山ほど取って食べます。牛乳もフィリピンでは高くて飲めないと毎食コップ2杯くらい飲みます。食べ残しや飲み残しの多い日本人は贅沢に慣れてしまっていることを実感してしまいます。
 曽爾自然の家には夏休み中ということもあって幼稚園から小、中、高校、大学のサークル、オーケストラ団員の合宿に至るまで各地から200人から300人余りが入れ代わり立ち代わり宿泊しています。朝の会と夕べの会では全員が参加し国旗掲揚と降納、ラジオ体操、それに各グループの代表が自分たちの紹介をします。
 実習生は「私の名前はサンドロです。エコロジー協同組合の実習生です。フィリピンから来ました。日本の技術を学んで働くために日本語を勉強しています。2週間前に日本に来ました・・・・・どうぞよろしくお願いします。」などとあいさつします。
 壇上に立って200人を超える日本人が注目する中で大きな声ではっきりと話すことはものすごいプレッシャーです。はじめは途中で詰まって言葉が出なくなっていましたが日に日に上手になっていきます。組合の高野理事長は「話そうと思うことは100回以上声に出して練習すること、それが練習だ」とか「国旗掲揚の時フィリピンでは胸に手を当てて敬うだろう?日本では胸に手を当てる必要はないが両手を体の横にまっすぐ伸ばして姿勢を良くして敬意をもって見上げなさい」とか懇切丁寧に指導されていました。
 彼らが日本で無事に働くことができるよう、そして何よりもフィリピンに帰って成功することができるよう願ってやみません。
 日本語講師として熱心に日本語を学ぶ若者たちの教育の一部に参加させていただいたことを光栄に思っています。