江東区立八名川小学校での授業風景
「世界にはこんなにつらい思いをしている自分と同い年の子どもがいると知り、涙が出そうになりました」。
2013年11月、「持続可能な発展のための教育(ESD)」に熱心に取り組んでいる江東区立八名川小学校で出前授業の講師を務める機会をいただいた。対象は同校の6年生2クラスの子どもたちで、提示された授業のタイトルは「世界の平和と日本の役割」。経験が浅い自分には少々荷が重い大きなテーマであったが、子どもたちの意見を直接じっくり聞くことができる機会でもあり、少し緊張しながらも、喜んで教壇に立たせていただいた。
冒頭の言葉は、授業を受けた子どもたちの1人が感想に書いてくれたものである。世界の人権状況とそれに対する政府・市民社会などの取り組みを写真を用いながらクイズ形式で説明し、子どもたちに想像力を働かせてもらった。幸い、用意した外国の写真の数々にみんな興味を示し、思ったこと、感じたことを次々に発表してくれた。当てられまいと下を向いて恥ずかしそうにしている子でも、こちらが当てると驚くほどしっかりした意見を伝えてくれる。また、「もし自分がこのような状況になったら?」という問いに対して、子どもたちが述べてくれたさまざまな角度からの回答は、10代前半の感受性ならではの豊かな想像力と他者への思いやりに満ちたものばかりであった。
後日、感想文を読みながら授業を振り返ってみて、大人となり普段から悲惨なニュースや深刻な貧困など困難な状況に日常的に接するようになった自分は、悪い意味でその状況に「慣れ」てしまっていたのではないかと、はっとさせられた。私たち「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」は、全ての子どもたちの権利が実現されるよう国内外でさまざまな取り組みをしている。今回の授業の中で、子どもたちへは「人権」の説明を「全ての人が持っている、幸せになることができる権利」と言い換えた。それを実現するためにまず必要なことは、シンプルだけれどもこうした活動の原点ともいえる「他者に対する想像力と思いやり」だということを、改めて子どもたちに教えられた。日々の業務に追われる中でも、常にこれを中心に据えていかなければならないという思いを新たにさせてくれる経験でもあった。
そして、1クラスにつき45分授業を2回、合計180分間話し続けたり子どもたちと対話したりすることは、実際体力がなければ務まらないことを今更ながら実感したことも大きな学びだった。自分が小学生だった時、いつも熱心に子どもたちの気持ちを受け止めながら授業をしてくださった恩師や、普段接している被災地の先生方をはじめ、日々膨大な業務に忙殺されながらも、子どもたちのために一生懸命な全ての先生のご努力とご苦労に改めて感動するとともに、私たち一人一人が、学校と先生、そして子どもたちをサポートしていくことの大切さを改めて認識した出前授業であった。