江東区立第三砂町小学校での授業風景
「私は、世界でも通用するような人になるために、日本人としての基礎知識を学び、異文化への興味、関心の心を常に持ち、何ごとにもチャレンジしていきたいと思います」。授業に出席した子供たちからさまざまな感想をもらった中で、授業に出掛けたかいがあったと感激させる多くの感想文の一つに書かれていた文章だ。
2014年9月19日にABIC小中高校国際教育グループの川俣氏から、ABICと協力関係にある㈶日本経済教育センター経由で小学校の国際理解教室への出講の依頼が来ているが、挑戦してみる気はないかとの依頼があった。ABICの紹介などで大学生相手の講義の経験は数多くあったが、小学生相手の経験はないので満足な授業ができるか自信を持てず、返答に窮した。授業の進め方を教えるからとの川俣氏からの熱心な説得があり、この依頼に応じることにした。
中南米での40年を超えるビジネス経験と、通算で22年の南米駐在経験をベースに、中南米の政治・経済・社会についてさまざまな講義や講演を行ってきたが、その際に使ったパワーポイントの改造に取り掛かった。日本人が中南米でどのような活躍をしてきたか、今後はどのようなことが日本人に期待されるかを説明するのに適したものを選び出し、視覚に訴えるものに変えた上で、アニメーション機能を使ってクイズ方式に模様替えした。授業の内容は、できる限り自らの現地での経験を通じて語り掛けるようにした。しかしながら、現地の最近の義務教育の実態や子供たちの生活・考え方には疎いこともあり、ブラジルを中心に現地の関係者に問い合わせ多くの情報を集めて補強をした。
約1ヵ月の準備期間を経て、2014年10月30日に江東区立第三砂町小学校、次に11月11日に台東区立田原小学校で授業に臨んだ。授業のタイトルは「日本とラテンアメリカ」、両校共に6年生全員、約120人が対象で、10分の休憩を挟んで100分の授業。体育館の床にじかに座った子供たちに見上げられ、表情豊かな輝く瞳に見詰められ、自然に話に力が入った。準備に苦労したクイズ方式のパワーポイントを使ったおかげで、授業の最後まで、子供たちの興味を継続させることができた。話し終えた後の質問の時間では、大学などで経験したことのないような質問攻めにあった。ほとんどが的を得た質問であり、さらに、思いもよらぬ視点からの質問もあり、子供たちに教えられる面が多々あった。
近頃の大学生のレベルを超えるような、理路整然として美しい文字で書かれた感想文が多くあったことに驚かされたが、感想文を読みながら授業を思い起こすと、白い紙にインクが広がるような子供たちの強力な知識吸収力に感銘した。そして、夢多き子供たちに、日本にとどまらず世界を知り広い視野を持ってもらうことの重要性を再認識した。このような機会を作ってくれた両校とABICに感謝するとともに、引き続きABICの教育分野での活動に期待をしたい。