活動会員のレポート

福島での生活状況記

  福島県貿易促進協議会海外販路開拓専門員 中嶋 なかじま あきら (元 蝶理)


シンガポールでの天皇誕生日祝賀会、
日本国大使と共に、右側が筆者

台湾での日本酒展示会に福島県として出展

 小生はこれまで駐在5ヵ国、通算23年(このうち東南アジア3ヵ国、通算15年)を経験し、2012年に最後の赴任地のマレーシアより帰国。その後、他の企業で2年間勤務し、2014年2月ABICからの募集に応募、首尾よく採用されて、2014年5月より福島県の海外販路開拓の仕事を開始した。ほぼ1年が経過し、福島県の現状およびその間のさまざまな体験を述べさせていただく。
 具体的な業務内容としては、県産品(主に農産物および日本酒等の加工食品)の海外への販路開拓で、そのための海外展示会への出展、海外顧客(インポーターおよびレストラン)開拓、県内業者への貿易相談等が主たる業務となっている。
 福島県の現状としては、原発事故から4年が経過し、除染作業を通じて、浜通りの一部を除いて、ほとんどの地域は生活上全く問題ないレベルまで放射線量は下がり、一部の地域以外でのその数値は香港と同じレベルで、実際のところでは中国の上海は小生の居住する福島市よりも3倍くらい高い数値といわれている。
 しかしながら、一度染み付いたイメージの払拭 ふっしょくは難しく、日本国内でも福島県産品というだけで拒絶されるケースがあるのも事実で、震災前の主な市場であった東アジアの地域での販売は輸入規制および風評被害が強く、特に難しい状況である。今後ともに、メデイア招聘しょうへい・海外の業務筋への売り込み等を通じた息の長い取り組みの必要性を実感している。
 県庁の所在地である福島市は福島県の北部に位置し、周りが山に囲まれた盆地で、一日の中でも寒暖差が大きく、そのため、おいしい新鮮な野菜が楽しめる。自宅から仕事場まで自転車で7-8分の距離で季節の変わり目を感じながら、これまで東京より北での生活を経験したことがなかった小生にとっては、日々新たの感がある。冬には、近くを流れる荒川でサケの産卵や大空を飛ぶ白鳥の姿等、北国ならではの風情だ。
 その代わり冬の寒さは尋常ではなく、寒さに体がついていけずダウンしたり、通勤途上で氷の上で転び肋骨ろっこつにひびが入ったり等、今年(2015年)65歳の老体には若干厳しいものがある。
 しかしながら、「明るく、元気に、前向きに」をモットーとした職場の雰囲気や、人情味あふれる周りの人たちに囲まれて、自分の求められている役割を果たすことに集中できており、多くの困難はあるものの福島へ来て良かったと実感しているところである。
 当地では歓迎会や県外からのお客さまとの飲み会が多くあり、そのたびに県内のいろいろなおいしいお酒(福島は有名な酒どころ)を飲め、これまで日本酒に興味がなかった小生もすっかり日本酒党になった。ちなみに福島県は日本酒の全国新酒鑑評会で金賞受賞数が2年連続で日本一である。また、福島県には至る所に温泉地があり、日帰りも可能な気軽に行ける温泉巡りも楽しみの一つになっている。
 2015年の1月、2月には上海、香港からのメディアの方が福島を訪問し、『福島の今』を各地で取材される機会があり、小生も同行した。福島県の果樹園、水産加工従事者の方を取材中に、業者の方の震災後の苦労話に記者の方が感動し何度も涙される場面があり、当県を応援する記事を寄稿いただき、風評被害に苦しむ福島県の方たちに大きな勇気を頂いた感がある。
 このような中で、小生としても福島県の復興のために県産品の輸出促進を使命感を持って取り組む覚悟を新たにしている今日この頃である。