活動会員のレポート

「経営学特講―英語によるプレゼンテーション入門」を終えて

  寺田 てらだ 好純 よしずみ (元 松下電器産業)


講義風景

受講生と(左から3人目が筆者)

 桃山学院大学で留学生と机を並べて受講した日本人学生の英語力について懸念を感じたので、ABIC関西デスクの吉富氏にその旨話をしたのが掲題講座開講の契機であった。何がそれほど気になったのか? 留学生全員が非英語国民で、英語学習については条件が全員同等であるにもかかわらず、日本人学生の英語力だけが格段に低かったからだ。これは実はこの大学だけの特異な傾向ではなく、複数の大学で同じ経験をしていた。今回もアンケートをとったところ、日本人学生の回答だけが的外れで、授業が理解できていないのが明白だった。
 こうして吉富氏と共に同大学の正亀教授と面談の結果、掲題の講座が2015年4月8日から7月22日の期間の春学期に開講となった。
 授業の組み立てに当たって、原則を2つ設定した。

①たいてい講師は授業に当たり、授業の何倍もの準備をしている。それに対し、受講生はその授業を70%も理解していれば上々、50%でも珍しくない。講師の準備作業を2倍の200とすれば、授業で100を講義し、学生の頭に残る量を50%で計算すると、200-50で、150が無駄である。これは問題の所在が聴く側の学生にあって、いくら講師が入念に準備しても事態は改善しない。この関係を逆転させて、学生に200%の準備をさせたいと考えた。

②語学学校のマネはしない。日常会話くらいは海外にいけばすぐに習得できる。その証拠に、昨今来日の外国人の日本語力には驚かされる。必要なのは、ビジネスマンになったときに、自らの専門領域、つまり経理マンなら経理について適切な専門用語で、簡潔、明快にビジネス英語で説明ができるかどうかである。
 結果、授業を次の3構成にした。

①プレゼンテーション技術を、英語を通して習得させる。毎週、学生にテーマを与えてプレゼンさせ、学期中に合計15回のプレゼンで鍛える。

②次に上記と同テーマの講義を英語でする。例えば、テーマを「エジソンは白熱電球を発明したか?」とすれば、そのテーマで講義を英語で行うと、学生はすでに1週間かけてエジソンについて調べているので、内容について予備知識ができており、理解が進みやすい。

③最後に、英語で日本人が理解しにくい点や、間違いやすい点などについて分かりやすく解説して、基礎英語力の向上をはかる。

 毎週のプレゼン実践は、準備も含めて、学生にかなり負担だったようだ。しかし負担は勉強した証しで、講師ではなく学生をしっかり働かせることができたようだ。「しんどい」の泣き言には「はい、ご苦労さま」で取り合わず、途中、担当教授からも「手綱を緩めないで」との激励メールも頂戴した。
 こうして14回の授業は無断欠席ゼロで、最終の15回目は学生の集大成「マイ・ベスト・プレゼンテーション」の場になった。正亀教授、吉富コーディネーター、それに日本に留学中の外国人学生4人がオブザーバー参加で、予想以上に盛大(?)に行われた。
 みんな堂々と胸を張って、なんとか英語で通そうと頑張りきったので、学生全員がここ一番のベストを尽くしたと実感された。授業を終えるに当たり、各自の感想を聞くと、全員が異口同音にしんどかったが、人前でしゃべる自信がついた。これからも英語の勉強を続ける。この授業を履修してよかったなど、うれしいコメントを聞かせてくれたのは何よりの報酬であった。関係者各位のご支援とご協力のたまもので、心より感謝している。