講義風景
修了記念の謝恩会にて
大原で活躍中のABIC講師陣と
左から小郷講師、筆者、植村講師
三菱商事の同期であった布施克彦コーディネーターの紹介により、大原学園(大原法律専門学校)水道橋本校の貿易実務講師となって足かけ4年半が経過した。商社マンの世界から教師の道に転身した経過や現在の状況などを記してみたいと思う。
商社で30年間勤務した私があらためて貿易実務に関心を持ったのは、52歳で会社を早期退職し、中小企業のフォワーダー会社に身を転じた時のことだった。それまでの使う側(荷主)から使われる側に立場が変わった時に、本来、イコール・パートナーであるべきフォワーダーの立場が極端に弱いと感じた。そして、その理由の1つが、貿易実務に対する現場サイドの勉強不足にあることを痛感したからである。
そこで、会社の若手職員の実力を向上させるため、当時スタートしたばかりであった「貿易実務検定試験」に、私も含めて挑戦することにした。併せて、貿易の最前線でありながら実態があまり公にされない、港湾、物流、環境の問題などの勉強会にも私自身積極的に参加することにより、現場の状況や課題などをつぶさに学ぶことができた。
その後、ご縁を頂いて大手印刷メーカーの物流子会社で国際物流業務の経験も積むことができ、通算11年にわたる現場業務体験を持てた。このような経緯を経て、全くの素人であった私が、ABICを通じ専門学校で講師稼業を始めることになった次第である。
私が担当している貿易実務講座は、東京都による再就職支援活動の一環で、1日3―4時間の授業単位の下、3ヵ月または6ヵ月サイクルのコースが組まれている。1クラスの生徒数は約30人、7割方が女性だ。年齢はさまざまだが、30代の人が中心になっており、貿易実務検定の資格取得に向けて、受講生も真剣に取り組んでいる。
貿易や国際物流には全く携わったことのない人たちが大半なので、まずは興味と関心を持ってもらうことが肝心だ。そのため、授業当日は、その日の朝の日経新聞の関連記事を解説することから始める。また、専門用語や貿易の仕組みを覚えてもらうことが大切なので、徹底した板書による講義や解説を行っている。
最終的には資格取得が大きな目標なので、自前の問題集や資料などのプリント類もできるだけたくさん作って配布している。さらに、受講生との距離感を短くできるように、顔と名前はしっかり覚えた上で、Q&A方式での双方向型授業を心掛けている。授業がほぼ毎日のように続く場合もあるので、翌日の授業に備えてお酒の付き合いも控えめにし、早寝早起きの健全な生活にも努めている。
教師冥利に尽きるのは、コースが終了した時に、感謝の寄せ書きやアルバムなどをプレゼントしてもらえることだ。この4年半で数百人の生徒を指導してきたが、彼らからの色紙やアルバムは私の貴重な宝物になっている。そして、資格を取得して見事に就職にこぎつけた生徒たちから、喜びのメールをもらえるのが、何よりうれしいことである。
経済のグローバル化が一層進む中で、貿易実務に対するニーズも年々高まっており、大原学園ではこれから全国的な講座展開を行う計画を持っている。そうした中、今年(2015年)、ABICから新たにお二人の方が大原学園の講師陣に加わった。お二人の先生方と相協力しながら、これからも再就職支援の活動に貢献できるように、健康で元気に頑張ってまいりたい所存です。