講演する筆者
杭州の会場となった浙江工商大学
嘉興職業技術学院での質疑応答の様子
ABICの2015年度の重要目標の一つが国際交流基金との共同プロジェクトの立ち上げと2016年度以降への継続ということであり、本年度(2015年度)2件のプロジェクトが具体化されたが、その両プロジェクトに私が参加できたのは非常に光栄であった。
1)最初のプロジェクトは、リードアジア2015アジア人材育成プログラムである。8月16日―24日、東京で行われた。国際交流基金の支援の下、「これまで日中交流になじみのなかった学生に、日中交流の楽しさ、意義を知ってもらう」ことを目的に共同生活を行いながら企業訪問、文化交流を通じて友好を深める事業であり、日中の大学生各21人が参加した。
私は初日の基調講演を行った。テーマは「グローバル社会のなかで生き抜く人材とはどういう人材で、どういう知見、マナー等を身につける必要があるか」「企業の海外進出の具体例」「企業訪問に際してのアドバイス」であり、実例・経験を交え分かりやすく説明した。海外に何回行ったとか何年住んだとかではなく、どれだけ深く現地の人と交流して現地の事情を体得するかが重要であるということ。日本企業もいろいろ課題はあるが、海外との関係は切っても切れない関係であり、中長期的に人材を育成し海外戦略を考えていく必要がある。会社訪問に際しても経営者、またそこに働く従業員たちがいずれもお互いきちっと意思疎通をしながら、中長期的な視野で将来を語っているかをよく見てほしいと話した。大手企業と中小企業につきそれぞれの違いと特徴についても説明した。
2)2番目のプロジェクトは、国際交流基金が中国各地で展開する「ふれあい広場」というプラットフォームを通じた日本企業文化セミナーである。中国浙江省で杭州市は11月7日、嘉興市は11月8日にそれぞれ周辺地域の大学生・教師を中心とした人たちを対象にセミナーを行った。講師は、私の他は現地日本企業の商工会の会長を務める企業の総経理(杭州市では杭州神鋼建設機械有限公司の田川氏、嘉興市では嘉興JFE精密鋼管有限公司の青柳氏)それに留学終了後日本で星野リゾートに就職した中国人閻氏の3人であった。
私のテーマは上記1)と同様の「グローバル人材とは」に加え、「日本企業の必要とする人材」「日本企業の課題」「国際コンソーシアムの実例」であった。現地企業の総経理の方々も非常に友好的で現地の学生に勇気を与えるような講演をされ、本セミナーは好評であった。私からは特に中国の大学生は賃金とか待遇で企業の良しあしを決める風潮もあるやに見受けられるが、ぜひ自分の目標をしっかり持ち、グローバルな観点で物事を見て、実社会で活躍し貢献してもらいたいと強調した。
最後に、1)のリードアジアのプログラムに参加した浙江工商大学の学生2人と、2)のセミナーの場で再会したが、彼らが率先してセミナーの受け入れの窓口をしてくれ、本セミナーが成功するよう、いろいろな手配をしてくれたことを付け加えたい。つまりリードアジア、ふれあい広場のセミナーがばらばらのイベントとしてではなく、一つの流れとして日中の底辺の交流に貢献したことを感じた次第である。本事業が長く継続し日中友好の底辺を底上げできることを祈念する。