活動会員のレポート

愛媛県食品・食材販路開拓事業に携わって

  千原 ちはら 長美 ながみ (元 丸紅)


愛媛県展示会で支援企業と
(右から2人目が筆者)

愛媛県展示会ブース

鮮魚の品ぞろえ

 本題に入る前にABICと小生との関わりについて、簡単に述べておきたい。15年前に商社を定年退職後、ABICの活動を知り直ちに入会、現在に至っている。この間、私の専門が食品・水産であったこともあり、アジア諸国へ何度か出張し対日輸出促進のための講演や品質管理の指導等行ってきた。国内では各大学や教育センターで「世界と日本の食料事情/水産事情」・「マグロの話」・「エビの話」等いろいろと講義をさせていただいた。
 さて本題であるが、愛媛県より首都圏販路開拓事業を受託したABICから委嘱を受けた6人のコーディネーターが、県の特産物の販路拡大に日夜奮闘している。愛媛県といえば、かんきつ類の生産は全国有数、キウイの生産も日本一、特に中身の赤い「レインボーキウイ」は糖度も高く、皇室納入実績もある。また雉肉も日本一で、第三セクター工場で加工された「熟成雉肉」は首都圏での販売チャンスあり。小生担当の水産関連では、養殖真鯛・シマアジ・太刀魚・真珠・削り節等の生産が日本一であり、特に真鯛は「県魚」にもなっている。
 小生が現在取り組んでいる販路拡大策を次に挙げる。

①従来の市場経由取引をできる限り市場外流通に切り替え、関連経費を削減しスーパー・居酒屋・すし店・外食向け等への直取引の推進。

②国や県の補助金等をできる限り活用、産地加工し、付加価値をつけ首都圏へ出荷。

③首都圏では連日デパ地下等で全国物産展、うまいもの展等開催されており、このようなイベントへできる限り出展させる。

 県魚の真鯛について一言、生産は日本一で年間5万トン、ただし刺し身や煮物で食べられる可食部分は、わずか3分の1の1.7万トン、残り3.3万トンの頭・骨・内臓は残滓処分されている。この3.3万トンを何とか食用向けとして再利用できないか、支援企業の1社が長年研究を続けてきたが、今般「真鯛粉末」の製造に成功した。この粉末には多量のカルシウム・コラーゲン・DHA・EPA等が含まれており、今後いかに「商品化」できるかが課題。真鯛粉末の商品化に成功すれば、水産業界の「ノーベル賞」との評価もある。
 現在、練製品やみそ・しょうゆ・パン・菓子等への副原料として、また、今後需要拡大が見込まれる介護食(やわらか食)向けとしての市場開拓も開始している。
 県には未開拓の食品・食材がまだまだあり、このような事業をぜひ続けていただきたい。また、世界的な和食ブームで日本食材の輸出は急増、2015年度輸出額7,452億円。県には中小企業向けの「愛媛県HACCP」制度もあり、HACCP取得企業の製品であれば、今後は国内向けのみならず、輸出向けとしても大いに成約のチャンスあり。
 最後にABICを通して、現役時代に培った経験や知識を、地域活性化事業の中で「社会貢献」させて頂いていることに改めてお礼を申し上げたい。