活動会員のレポート

東京外国語大学「社会・国際貢献情報センター」とABICの連携について

  ICSICセンター長(日本経済新聞社客員、元 常務取締役)   和田 わだ 昌親 まさみ


講演会「シリア危機とロシア介入」
(2015年12月8日)

東京湾監視船の見学会

 東京外国語大学の「社会・国際貢献情報センター」は略称をICSICという。日本貿易会傘下の「国際社会貢献センター」はABICという。似たような名前だが、先輩格はABICの方である。しかも長年のさまざまな実績がある。
 最初から「似ているな」とは思っていたが、当方は大学の組織、ABICは民間の組織で、狙いは異なる。創設した2年前は別々の役割を果たせればいいと漠然と考えていた。
 しかし、道筋は違っても最終的な目標は同じ「社会貢献」である。ABICの多面的な活動を知るうちに、お互いに堅固な協力関係を築けないか、と考えるようになった。そして2,600人超の国際派ビジネスマンOBのパワーを求めるICSICと、社会貢献活動に大学ブランドを付加する効果を期待するABICの利害が一致し、正式な連携に発展した。
 それが2014年秋の「社会・国際貢献に関する連携協力」に関する包括協定書の調印である。東京外大の立石学長ももろ手を挙げて賛成した。それを契機に1-2ヵ月に1回程度、定期的に会合を開きお互いの事業計画や懸案事項の情報交換が始まった。
 具体的な活動で最も重要なのは、ABICが行っているグローバルスタディ支援の活動に、東京外大が協力すること。ABICは全国のSGH(スーパーグローバル・ハイスクール)などに講師を派遣しているが、東京外大がこれを後押しする。SGHからの出前講師の要請はさまざまなので、これに対して共同で対応する。東京外大にとっても、SGHの指定を受けた高校との接触は重要で、高校生の外語大受験を促す意味がある。
 ICSICの活動を少し紹介すると――。発足は2013年12月。簡単に言えば、社会貢献や途上国に関する情報を多方面から収集し、大学の「知」の分析を加えて内外に発信しようというのが狙いである。
 東京外大は日本最古の語学系国立大学で、英語を含めて「27言語」に対応できる体制を整えている。この学内環境を生かして「社会貢献」と「途上国」の情報ハブ機能を果たそうというものだ。
 最近は日本の大学のほとんどが国際化、グローバル化を前面に押し出してイメージアップを図っている。このため国際化の「本家」である東京外大は他大学にない特徴を打ち出す必要がある。文科省が選定したSGU(スーパーグローバル大学)にも選ばれており、これを機に世界言語や情勢分析をさらに強化しようとしている。
 ICSICの発足はその方向に沿ったもので、すでに途上国専門家による「地域講演会」(原則無料)を何度も開催している。これまで中米エルサルバドル支援、ウクライナ危機とロシア、インド・ビジネス、アフリカ・タンザニアの現状、シリア危機と中東、国連の新しい役割、クウェートの女性たち――などタイムリーなテーマを設定し、好評を得ている。ICSIC主催の「地域講演会」にはABIC会員にも情報を流し、多くの会員に参加していただいた。併せてICSICは国際貢献に関する見学会などの各種イベント(対象は学生および一般人)も仕掛けている。
 「社会貢献」が今ほど重要視される時代はない。世界ではマイクロソフトのビル・ゲイツ氏、フェイスブックのザッカーバーグ氏ら有名経営者が巨額の資産を社会貢献のために投じている。ICSICもABICと共にそうした流れに乗っていきたい。