最終回のまとめの講義をする筆者
ABIC会員講師との打合せ会で、右端が筆者
本学において、国際社会貢献センターによる講義が初めて開設されたのが2003年。以来この春で14年目を迎える。もうそんなになるのかと驚くばかりである。ABICの大学講義の案内が届き、担当の方に直接大学までご足労いただき、初めてABICについてお話をお聞きした。日本の戦後復興、成長期において資源なき日本経済を支えてこられた総合商社のまさに「経済戦士」の体験を学生に聞かせたいと思い、お願いすることになった。当時学部長補佐であり、専門も世界経済、途上国経済であった私がコーディネーターを担当することになった。科目開設以来、多くのABICの講師の方々にお世話になった。感謝の気持ちとともに、担当の先生方のお顔が思い出される。
本講義は当初、「経済特論B」として、新カリキュラムでは、「世界経済事情Ⅰ・Ⅱ」として、さらに2015年から「グローバル経済」と改称し講義が行われてきた。毎年、前・後期合わせて2百数十人が参加する。したがって受講学生の累計は2,500人ほどに上ろう。1年次にミクロ、マクロ経済学を学んだばかりの学生にとって、具体的な世界経済の現状と課題を学ぶ本講義は、世界と現実に視野を広げる好機となる。前期には世界経済と日本経済、資源、エネルギー、食糧、環境、NPO等、世界経済の主体、仕組みに関わる地域横断的な多様な課題について学び、後期には、中国、インド、ブラジル、ロシア等の新興経済地域とEU、中東等の地域別の経済と生活を学ぶよう工夫されている。1人の講師について連続で2回担当をお願いしている。講師にとっては1回目の講義の後、学生からの質問等の反応を受け、2回目につなげ、締めくくることが可能となり、受講生にとっても授業の理解と学習の成果を確認することができる。
オムニバス形式の講義においては、一般に学生と教員とのコミュニケーションの実現は難しい。本講義では、ABICの講師の方々に毎回の授業の予習課題として、キーワード調べ、あるいは問題を課してもらい、学生は学修ポータルシステムを用いて、回答、提出し、講義に参加する。また授業終了後、学生による講義アンケートを実施している。内容の理解、共感に関して5段階で評価し、また授業で学んだこと、感想、質問等、毎回web上で記述することが求められている。次回の講義のために講師の方にそのまま、アンケートの結果をお知らせしている。おそらく、講師の先生方にとって学生の反応は新鮮であろうし、意外なこともあろう――聴いていないようで、しっかり聴いていたり、あるいは思ったより共感を得たりと。
近年、大学の教育課題として、学生の主体的な学びをいかにして実現するかが問われている。本講義でも、いわゆるアクティブ・ラーニングを導入しようと試みている。講師の方には、学生相互のディスカッションと討論の成果に対する講師からのフィードバックの時間を設けてもらうようお願いしている。果たして講義はさらに活性化するか。これからの課題である。
今年(2016年)もABICの講師の方々のご指導とお力添えをいただき、ともに日本の、世界の経済社会を担う次世代の人材育成に取り組んでまいりたいと思う。
なお本講義のティーチング・アシスタントの大学院生サハデブさん(ネパール)が2014年の第10回日本貿易会懸賞論文で大賞を受賞したことを本講義の成果の一つとして記しておきたい。