台湾百貨店での青森催事風景 左端が筆者
シンガポールでの青森県産品
プロモーション(明治屋)左が筆者
事務所から見た津軽海峡冬景色
2016年3月26日に東北新幹線は東京からわずか4時間で函館まで結ばれた。40年前に私が日本興業銀行仙台支店に赴任した時は、上野駅から青森駅までは約10時間の行程であった。それから30年後、興業銀行から転職した東京都の外郭団体は同僚全員が元商社マン。ABICへ入会するように勧められ自然に会員となった。いわば金融村から商社村への転身であった。
2年後に当外郭団体を辞めた後、青森県でのお話をABICから頂いたのは62歳になったばかりの頃。応募者がなかなかいないとのお誘いであったが、県産品を海外に売るという話は元銀行員としてかなり躊躇した。しかし私にとり青森は大学卒業後担当した思い出深い土地。その後勤務で海外を転々としても時折リンゴの白い花と岩木山を思い浮かべていたほどの青森好き。青森への恩返しの意味も込めて応募した。
運よく採用試験に合格したが、次にはリンゴ・海産物等の加工品を東南アジア中心に海外へ輸出促進するという、ハードルの高いミッションが待ち構えていた。幸いなことに、素人の私を見かねた県をはじめ周囲の津軽の人たちが非常に協力的であったことや、県全体で力を入れてきたリンゴやホタテ等が台湾を中心に東南アジアに浸透しており、既に高品質・安全な「AOMORI」ブランドが確立していたことで県産品の売り込みも好意的に迎えられるとともに、各国に進出している日系百貨店中心に青森県物産展開催を要請される等幸運にも恵まれた。
一方、新商品発掘のため津軽(ジュース等)、八戸(海産物)、陸奥湾内(ホタテ)各地域に生産者を訪問して面談し、生産規模、海外進出意欲、決済条件の希望等々市場調査を実施し、ノウハウを蓄積してきた。県の三方を囲む海から捕れる、バラエティーに富んだ海産物・県内各所に湧き出る名水で作る地酒・生産高日本一のカシスを使ったジャム等々、まだ世に出ていない逸品がたくさん青森には埋もれていると実感している。販路開拓は、既存のリンゴ販路を利用して売り込みに行くとともに、国内外の商談会への積極的参加やインターネットで知った海外業者への電話での交渉等で幅広くセールス活動を展開。このため海外出張は1週間単位でほぼ1回/2ヵ月、国内出張も1回/月のペースでこなし、この間隙を縫って、席を置いている県物産協会の若手と県内企業を訪問する等かなりハードにかつ楽しく飛び回っている。
この結果、シンガポールへ地酒・リンゴジュース、台湾へサバの甘露煮、香港へ干しホタテ等で実績が出始めている。これらの動きは東南アジアにとどまらず華僑の進出著しいカナダの諸都市からもリンゴジュース等の注文があり、華僑の動きと共に県産品が世界中に出荷され始めている。今後は県産品同士を結び付けた商品開発・対象国の拡大により、「AOMORI」ブランドの一層の浸透に寄与していきたいと考えている。
雪は深いものの、梅雨のない豊かな自然に恵まれた青森は一年中楽しみがある。夜な夜な地元の名物おばさんの
酒場で同年代の単身赴任者・地元の連中と怪気炎。週末は秘湯温泉への日帰り入浴のはしご、八甲田山登山。冬場は大間のマグロや神田いせ源御用達の風間浦産あんこう鍋を堪能し、時たま弘前で津軽人と飲み歩くという至って健康的な生活をエンジョイしている。このため東京の自宅へは約3時間の時間短縮となったものの逆に足は遠のくばかり。四季折々の変化をめでながら青森での生活を堪能している。