教壇の筆者
私は2013年から毎年8月第1週の5日間、福岡大学で夏季集中講義の講師をやっている。なぜ、私が福岡大学の講師となったのか、その経緯を簡単に説明したい。私は2012年2月に会社を辞め、同年10月にABICの大学・EC(エクステンションセンター)講座担当コーディネーター(CN)となった。その直前にABICは福岡大学から、前述の夏季集中講義の講師派遣の依頼を受けていた。当時、ABIC の九州地区での講師派遣は、立命館アジア太平洋大学(APU)と長崎県立大学の2校のみだったこともあり、福岡大学の依頼をABICは二つ返事で引き受けた。引き受けたが、問題があった。大学の1科目(2単位)は、1週間1コマ(90分講義1回)を4ヵ月かけ15コマやるのが一般的な構成だが、この集中講義は1日3コマ、5日間で15コマの構成となっていた。通常、ABICが行っている講義は、複数の講師によるオムニバス形式だが、福岡大学の集中講義は、東京~福岡間の交通費と福岡での宿泊代がネックとなり、オムニバス形式は受けられず、結局、一人の講師が15コマ全てを担当する形式となった。このため、ABICで講師選びに頭を悩ませていたところ、タイミング良く(悪く?)CNとなった私が、会社を辞める直前まで商社の総合研究所にいたことで、「知識の引き出しが多そうだ」と誤解し、私を講師に選んだとのことである。
福岡大学は、福岡市の南西、市内中心部より地下鉄で17-18分の所にあり、医学部はじめ9学部31学科、約2万人の学生を擁する、西日本最大の総合私立大学である。
集中講義のテーマは当時の担当教官(商社出身、2015年退官)と相談し、何とか決めたが、以降、講義資料作成の関連資料や情報収集、整理に追われる日々となった。問題は、講義資料の作成だった。現在、大学ではパワーポイント(PPT)による講義が主流で、ABICの他CNより、PPTによる資料作成を勧められた。PPTの資料作成を勧められたものの、当時の私にはPPTの知識、技術はほとんどなく、関連参考書を頼りに独学で、PPTによる講義資料(スライド)を作成するしか方法はなかった。初めはスライド1枚分の作成に1-2時間かかり、合計600-700枚の講義資料は、講義開始1ヵ月前に完成した。この作業経験のおかげで、今では人並みにPPTを活用できるようになった。
集中講義の受講生は商学部の2・3・4年生が対象で、過去3年間は毎年数人のアジア系留学生が入り、22-23人規模のクラスであった。しかし、8月1日から始まった今年(2016年)の講義は、簡単に単位が取れるとの「うわさ」が広まったせいか、受講生は50人に増えていた。午前9時から昼食を挟み午後2時半まで、学生も私も体力勝負だ。今年も15コマの講義とその後の試験が終わった。8月の福岡は、今年も暑かった。学生の読み(?)通り、受講生全員が及第点を取り、単位取得ができた。講義は「中南米とブラジルから世界を観る」、要は中南米とブラジルを切り口に、「世界のしくみとトレンド」を理解してもらう内容だ。卒業生の9割近くが福岡県内に残るといわれる福大生だが、集中講義で学んだ「世界のしくみとトレンド」を少しでも理解して、卒業後の人生を送ってほしいと願っている。