活動会員のレポート

初めてのミャンマー

  はやし 賢一 けんいち (元 伊藤忠商事)


ヤンゴン市内
行き交う車に発展を感じる

ヤンゴン青果市場

ヤンゴン魚市場

 2016年6月末にインドネシア駐在から帰国し、同時に伊藤忠商事を退社。海外経験および食品加工メーカーとしての経験も長くあり、これを有効活用できるような機会があれば、と友人に紹介されたABICに登録。登録後1-2ヵ月で、コーエイ総合研究所が国際協力機構(JICA)より受託した「ミャンマー国投資促進・輸出振興にかかる基礎情報収集・確認調査」の「投資ポテンシャル分析」担当の応募機会を得た。
 ミャンマーは2011年の米国の経済制裁解除および2016年4月のアウン・サン・スー・チー氏率いるNLD(国民民主連盟)政権の発足を受け、「最後のフロンティア」として世界中に注目されており、その成長の一助となればと思い早速応募し、幸運にも採用していただいた。
 2016年12月11日(日)の夕刻に直行便(ビジネス客でほぼ満席)で調査団の一員として初めてヤンゴン空港に降り立ち、熱帯特有の生暖かい風を感じ、東南アジアに来たと実感した。日曜日の夕刻にもかかわらず大渋滞で、1時間強かけてヤンゴン市内のホテルに到着。
 2016年12月、2017年2月と5月の計3回・6週間ミャンマーに滞在し、日本法人・日系の合弁会社・現地会社等計50社近くを訪問し、現在の仕事の状況や問題点等を聞いたが、総じて渋滞(日常茶飯事)を含めた物流の問題と電力不足(ヤンゴン市内でも毎日停電あり)の指摘があり、この解決なくしては経済の急成長は難しく、まだ時間がかかりそうに感じた。
 急速に発展しているヤンゴンであるが、以前にタイやベトナムで感じた「熱気」をあまり感じなかった。他国では残業したい人がほとんどだったが、ミャンマー人はお金ではなく家族の健康に幸せを感じ、家族との時間を大事にしたいと考え、終業時間になればさっと帰ってしまう。けいけんなる仏教徒で真面目で親切な民族性であり、「急成長」ではなく「緩やかな成長」で徐々に慣れる方が合うのかもしれない。
 産業は農業が主体で、米・豆類は中央デルタ地帯が主産地。ネピドー以北の北半分は海抜1,000m以上の高地で一日の気温差が大きく野菜・果物の好適地(特にシャン州)。また、水産業においては、アンダマン海・ベンガル湾という好漁場を有し、エーヤワディー川等の大きな河川沿いでは淡水魚の漁・養殖が行われている。ただ、軍事政権下の長年の鎖国的政策により古いやり方が主流となっており生産性が低いのが問題。今後の新しい知識や技術の導入・教育・指導により改善が進むと思われる。
 また、政府主導で日本が積極的に参画しているティラワ工業団地(ヤンゴン郊外)では第1期の約90社が操業中または建設中で、電力供給も約束されており、産業発展の好例になると期待され、第2期以降の土地造成も開始された。そして気になるミャンマー料理だが、タイ・中国・インドとおいしい料理国に囲まれている割にあまり特徴がなく、油を多く使った料理が中心で少し胃に重く感じた。ただ、おいしいビールやワインがありこれはこれで魅力的で、ヤンゴン市内には100軒近くの日本料理屋もあり、日本人には住みやすい所である。
 この調査中に知ったことだが、ちょうど同時期に「会長 島耕作」のミャンマー編が週刊誌に連載されており、日本人のミャンマーに対する関心が深まる一助となっているように思われ、私のこの投稿も皆さんに少しでもミャンマーに興味を持っていただければ、と思ってお受けした。
 ミャンマーの経済成長にはまだ時間がかかると思われ、私自身大いに興味を持って見守っていきたいと考えている。