シンガポール福島県人会会長と
シンガポールの小売店にて(左が筆者)
マレーシアの福島県産米輸入業者を
福島市の桜の名所、花見山に案内して(右が筆者)
2016年の秋、福島県での活動案件をABICからいただいた。60歳になったばかりで、次の機会を探していたところだった。福島県の出身であり、採用になれば生まれ育った地元への恩返しになるかも、と応募し幸いに採用となった。採用から1週間後には福島市の住人となり、県庁勤務開始である。
2016年11月に就任し、マレーシアへの県産米(こしひかり)の輸出を担当した。2011年の震災以降停止していた県産米の輸出を、2017年4月から再開。8月には、内堀知事によるトップセールスにより、年間100トンの輸出に合意。2018年の3月で100トン以上の輸出を達成する見通しとなった。桃は15トンのレベルだが、全日本のマレーシアへの輸出量の半分以上を福島県から輸出しているので、米も桃も日本産の輸出量でNo.1である。
2018年の目標は、インドネシアに桃10トンを輸出することだ。さらに、3年後には50トンを輸出する計画である。インドネシアには1年半ほどだが駐在したので、懐かしさと親しみがある。2018年1月には、12年ぶりにジャカルタへ出張した。渋滞のひどさは相変わらずだった! しかし、新都心計画と呼べるような、ジャカルタ郊外に新都市建設が進んでいるのは新鮮だった。毎年500万人の人口増加があり、現在2億6千万人。世界最大のモスレム人口国。東のパプアから、西のスマトラまで東西の幅は米国以上なので、国内の時差は3時間ある。今後が楽しみな巨大市場である。
ご存じの通り、福島県も2011年3月の震災と津波に見舞われた。そして、福島第一原子力発電所(通称フクイチ)の事故により、今も風評被害に苦しんでいる。事故以前の県産品の主な輸出先は香港、台湾、韓国であった。残念ながら、この3ヵ国はいまだに福島県産品の輸入を禁止している。科学的根拠によるものではない。それ故に福島県は、タイ、マレーシア、インドネシアへの輸出に取り組んでいる。震災と津波、そして原発事故により国内も海外も壊滅的な状況に陥った県産品を2011年以前の数字に戻し、さらに大きく伸ばすことが、福島の復興を成し遂げるための大きな課題の一つなのだ。
さて、福島県には米の他にもおいしいものが多々ある。おいしいお米とおいしい水を使って醸造された日本酒は、その筆頭である。全国新酒鑑評会で福島県産酒30銘柄が入賞し、うち22銘柄が金賞を受賞。5年連続で、金賞受賞数No.1の実績である。米がうまい、水がうまい、そしてたゆまぬ努力による技術力が5年連続No.1の背景である。
「くだもの王国ふくしま!」である。桃、梨、ブドウ、柿、リンゴ、イチゴ。どれをとっても味は日本一だ。これらの県産品を世界に輸出し、福島の誇りを取り戻す! 大変ではあるが、やりがいのある仕事である。
今の仕事で福島市に着任してまだ1年半にもならないが、この仕事をいただいたことにとても感謝している。正直なところ仕事は大変。冬寒く、夏暑い気候はかなり厳しいものがある。しかし、この盆地気候がおいしい米と酒、果物と野菜を育んでいる。おかげで私の体重は増えるばかりである。
マレーシアの次に、2018年はインドネシアだが、さらにその次には中東がターゲットになるであろうと期待している。中東には23年間関わったので、中東への輸出をぜひとも実現したい。冠雪した吾妻小富士を県庁から見上げながら、やがて取り組むであろう、灼熱の国々に思いをはせる日々である。