ハノイのビール工場で技術セミナーに参加した
日本企業の皆さん(前から2列目左端が筆者)
バンコクでの技術セミナーでB2Bセッションの
ファシリテーターをする筆者(左)
GECとの出会い
まもなく60歳にならんとする2013年の秋にABIC関西デスクから、大阪のある公益財団が国際業務に経験がある中間管理職を公募しているので受けてみてはと勧められた。聞けば、日本の環境技術を途上国に普及させる非営利の仕事だという。私は新米社員の時からもっぱら中国向けの繊維機械の輸出営業に携わり、現在の中国全土で引き起こされている深刻な環境破壊を残念に思っていたので、これはやらねばと勇んで応募した。
縁あって採用された団体は地球環境センター(略称:GEC)という大阪に拠点をおく公益財団法人で、1990年代初めに国連環境計画(UNEP)国際環境技術センター(IETC)という施設を大阪に誘致した際に、その活動を支援するために設立された団体である。大阪府・市の外郭団体として二十余年の活動実績があるが、大阪府、大阪市と続いた一連の外郭団体の整理で予算が削減され、2014年度には補助金支出や職員出向が完全に打ち切られた。存続の危機といわれていたその独立初年度の2014年度から私はGECの仕事に関わることになった。
環境ビジネスの海外展開支援という仕事
私がGECで主に担当したのは近畿経済産業局が主導する「関西・アジア 環境・省エネビジネス交流推進フォーラム(Team E-Kansai)」という企業フォーラム(会員数約170社)を軸とした環境・省エネ関連企業の国際展開を支援する事業で、日本の優れた環境・省エネ技術を途上国に普及させ、現地の環境課題の解決と関西エリアの経済活動の活性化の一挙両得を図るのが目的である。
環境・省エネビジネスが他の産業機械のビジネスと大きく異なる点は、当局の環境規制やエネルギー政策と密接に関わっていることで、水、大気、廃棄物という基本テーマは同じでも末端でのニーズは国と地域と発展段階によってまちまちである。しかも複雑な利権や有形無形の障壁もあって外国企業の参入は容易ではない。自分たちの街や工場の最も汚いところをおいそれと外国人に見せてくれない。
そのためTeam E-Kansaiでは、両国の政府機関で結ばれた協力の枠組みを活用し、その下で業界団体などとパートナーシップを形成して、その枠組みの中で企業間のB2B交流を推進するという遠回りな活動を展開している。
例えばベトナムでは産業別の団体との交流がうまくいきだして、2017年度はベトナム・ビールアルコール飲料協会(VBA)と共催でハノイとホーチミンでビール工場の技術者を集めて環境技術セミナーと商談会を開催した。2018年度は交流先を繊維・皮革工業にも広げて商談会を開催する予定で準備を進めている。また、タイではクーデターによる中断を経て、タイ工業連盟との民間交流を復活させてUNEP IETC主催の廃棄物管理技術セミナー開催を運営し、現地政府機関の参加も得て日本の廃棄物管理技術を紹介した。上からの交流で末端の現場まで辿り着くにはまだまだ深化が必要である。中国では現地企業が十分に育ちアジアで日本企業と競合する中で、Win-Winの関係を築くべく、広東省科学技術庁と協力して環境・省エネ領域での日中合作プロジェクトの創設に取り組んでいる。
終わりに
私たちの仕事はあくまで裏方で、商談会がうまくいったからといってすぐには成約とはならないし、なかなか成果も見通せない。それでも、参加企業の中には「あれ、商談続いてますよ」とか「やっと契約ができました」とか律儀に報告してくれる方もいて、それが大きな励みとなった。残念ながら私は2018年度が65歳定年で後任に後を託すことになるが、日本の真面目な環境技術がアジアに根付き、アジアの環境課題の解決に貢献できることを願ってやまない。