活動会員のレポート

小学校でのオリ・パラ教育「スイスってどんな国?」

  尾石 おいし 茂也 しげや (元 トーメン)

 今般ABICのお誘いを受け、墨田区立緑小学校6年生の生徒約90人の前で、スイスの文化・歴史について講演をさせてもらう光栄を得たことを非常に感謝している。と申し上げたが、内心小学校6年生の生徒にどのようなプレゼンを行えば良いのか?皆目見当がつかず、一時は内心お断りを入れようと思った。
 永世武装中立、直接民主制、連邦制、国際機関等々学校で習うようなことを淡々と述べても、 6年生はその内あくびをし始め、興味を失うに決まっている。考えあぐねた結果、子どもたちの興味ある物から話し始めて引き付け、その後スイスの本質を説明しようかな?と思い立ったのだが、これも困難なことと判明した。
 私がいつの間にか子どもの興味のあること自体が分からないおじいちゃんになっていたことを認識していなかったことである。これは痛烈なショックだった。
 その痛々しい悩みを横目で見ていた女房が、さすが女性は素晴らしい、「あなた当然食べ物でしょ、チョコレート!」。これから私の頭が回り始めた。
 プレゼンが何とか終わった時に、女子生徒3人が駆け寄ってきてくれて、質問があるとのこと。喜んで「何でしょうか?」と聞くと、「その眼鏡はいくら?時計は?そのスーツは?」女の子らしい質問に絶句した。
 私のプレゼン内容には一切触れられずであったが、小学校6年生と楽しい話ができたことが素晴らしい成果であった。
 その後1ヵ月ほどして、90人の生徒から「尾石様」と題した寄せ書きを一人一人より頂いたことは涙物で、生涯の記念となった。


小学校でオリ・パラ教育の授業
 東京都では、オリンピック・パラリンピック開催に向け、小中高等学校で「ボランティアマインド」「障害者理解」「スポーツ志向」「日本人としての自覚と誇り」「豊かな国際感覚」を育む活動を推進している。その「豊かな国際感覚」育成の方法として、参加予定206ヵ国を、各小中高等学校に学習目標国として大国1ヵ国・小国4ヵ国ずつ割り当て、生徒たちがそれらの国について認識を深めるようにしている。現在小中高等学校へ行ってみると、廊下や階段の壁に、各校の学習対象となった5ヵ国について、地図や国旗などを紹介した模造紙が張ってあるのが見られる。
 生徒たちがさらに詳しく学習を進めるため、学校側が外部講師を呼んで授業を行うこともあり、各国大使館、在日外国人・留学生、JICA、青年海外協力隊OB、NGOなどが講師を務めている。ABICも講師派遣可能な組織として、教育委員会に登録されており、学校側でなかなか適切な講師が見つからないような場合、声が掛かってくる。
 こうしたきっかけで、この2年間でABIC会員は、アゼルバイジャン(目黒区・東根小学校)、リベリア(池袋第一小学校)、マダカスカル(練馬区・大泉第二小学校)、パラグアイ(国分寺市立第十小学校、杉並第七小学校)、インド(葛飾区・松上小学校)、エジプト(三鷹市立第四小学校)、オランダ(大田区・相生小学校)、スイス(墨田区・緑小学校)の授業を行った。
 小学校での授業は、大学での講義や、社会人向け講演などとは違った難しさがあり、講師を務めることになった会員は、その準備に大いに頭を悩ませることになる。教壇に立って話を始めても、子どもの集中力は10分程度、いかに興味を持続させるか、話題や話し方に一段の工夫が必要になってくる。かくして、多くの会員にとっては、一生に一度といえるかもしれない小学生向け授業は、終わってみれば忘れ難い経験にもなっている。

(小中高校国際理解教育担当コーディネーター)