ギザのピラミッドとスフィンクス
ロンドンでの個別企業面談風景
(右手前が筆者、
右中央はGAFI次官モハメド・アブデル・ワハブ氏)
2017年9月から2018年10月までの13ヵ月間、JICA専門家としてエジプトに派遣された。このプロジェクトは2013年と2016年の2度にわたるエルシーシエジプト大統領の訪日を受けて、投資ビジネス環境の整備、投資誘致力の強化等を目的として、エジプト投資・フリーゾーン庁(GAFI)より長期派遣専門家の派遣を要請されたことによるものである。
私は1977年に丸紅に入社してプラント本部繊維機械部に配属され、当時綿紡績が基幹産業であったエジプトへの紡績プラントの輸出が主な担当業務であったことから、1986年、1995年と2度にわたって11年間エジプトのカイロに駐在した。2001年に丸紅を早期退職後、ABICを通じJICA専門家として2年間GAFIジャパンデスク長として勤務、その後三井住友銀行カイロ事務所長として9年間駐在したので、今回の勤務を入れてエジプトには通算23年間駐在した計算になる。今回のGAFIジャパンデスク勤務は、2001年から2003年までの経験を基にABICの仲介サポートを得て実現したものである。
17年のギャップのある2度のGAFI勤務で感じたのは2点で、一つはGAFIのスタッフのレベルが格段に向上していること(PhDのスタッフが多数いる)と、GAFIを訪問する日系企業の数が桁違いに増えたことである。後者については日系企業の欧州進出がかなり増加したことと、湾岸特にドバイに中近東とアフリカをコントロールする日系の支社や出張所が設立されるようになったために、頻繁にヨーロッパ諸国やドバイからエジプトに出張者が来るようになり、その際にGAFIのジャパンデスクを訪問するというパターンが定着してきたものと推測される。また最近は製造業を中心に、エジプトを軸にアフリカマーケットへの展開を図るとか、ヨーロッパの生産拠点をエジプトなど北アフリカに移したり増設したりという計画をもってGAFIを訪問される企業が増えているのを痛感する。EUとの連合協定や東南部アフリカ市場共同体(COMESA)などの自由貿易協定のメリットもそんな動きの背景にあると考える。
今回の業務は13ヵ月という限られた任期だったが、2017年12月のサハル・ナスル投資・国際協力大臣の訪日、2018年9月のロンドン、デュッセルドルフでの在欧日系企業対象のエジプト投資促進セミナー(JETROとの共催)のメインイベントを軸として、新投資法の紹介や在エジプト日系企業のサポート等種々のアプローチで日本からの投資促進業務ができたと考えている。
エジプトは日本の3倍弱の広い国土を有し、すでに非公式には1億人に達していて数年以内に日本を抜くといわれる人口とマーケット規模があるのに、GDPは日本の20分の1という現実を見ると、今後まだまだ伸びるポテンシャルのある国の一つである。
先見の明のあるエルシーシ大統領は日本の教育制度をエジプトに導入したいとの期待から、大使館・JICAに協力を要請してきた。現在小中高から大学、大学院までJICAが日本式教育をエジプトに普及させる取り組みを実施しているが、これは今後の日本企業のエジプト進出を助ける意味からも大変有意義な協力と考えられ、エジプトが日本式の教育制度でどのように変わっていくかを見るのは非常に楽しみである。
最後に、エジプトはスポーツ天国である。ゴルフ、テニスはもちろん、乗馬、スキューバダイビング、ウィンドサーフィンは週末に、しかもかなり低料金で楽しむことができるので、スポーツ好きにはうれしい国である。私が23年間もエジプトにいられたのは多分そのせいだろう。